野性味溢れるボクシングで相手をなぎ倒すナイジェリアの悪夢
サミュエル・ピーターは「失われた栄光のヘビー級」を取り戻すことができる野性味溢れるパワフルなボクサーです。マイク・タイソン、レノックス・ルイスが引退した後、ヘビー級戦線は過去と決別するように大きな変化を遂げます。その変化を一言で表すと「上手いヘビー級ボクサー」が増えたんです。ウラディミール・クリチコ、クリス・バード、ルスラン・チャガエフなど、これまでのヘビー級ボクサーと違って、卓越したテクニックを持つボクサーがヘビー級戦線のトップを席巻し始めます。
しかし、この変化はヘビー級戦線から活気を奪ってしまいます。「迫力がない」「豪快なボクシングが消えた」などの批判が集まり、ボクシング界の注目はパワーとスピードを兼ね備える中量級へ移ってしまったんですね。オスカー・デラホーヤ、フロイド・メイウェザー、ミゲール・コットなど人気と実力を兼ね備えたボクサーが結集する中量級はボクシングファンの注目を集め、ファンが期待するビッグマッチが次々と実現します。
逆に柱を失ったヘビー級戦線は一気に失速し、安定チャンピオン不在のまま、混迷の時代へ突入します。ボクシングの歴史はヘビー級の歴史と切り離せないと思っていたのですが、ここ数年はすっかりボクシング史に見放された感じです。ライトヘビー級チャンピオンのロイ・ジョーンズがヘビー級タイトルを獲得するなど「本当にどうなっちゃうんだろうな?」と本気で心配したこともありましたが、ピーターの登場でヘビー級に一筋の光が差し込みます。
ピーターの試合を初めて観たときは「久しぶりにゴリ押しファイターが出てきたな」と思いました。荒々しい左右のフックを武器にパンチを振り回し、相手を威圧。捨てパンチが全く無いので、すぐにヘロヘロになってしまうのですが、それもまた魅力です。パワーと迫力で相手をねじ伏せるヘビー級らしいボクシングしかできないのがピーターなんですね。
2005年には3度のダウンを奪いながらウラディミール・クリチコに判定負けするなど、まだまだボクシングの粗さが目立ちますが、「次の試合も観たくなるボクサー」がピーターです。ノスタルジックなヘビー級ボクサーの面影を背負う「ナイジェリアの悪夢」。「栄光のヘビー級」を取り戻せるかどうかはピーターの豪腕にかかっていると言っても過言ではありません。スタミナをしっかり強化することができれば、ヘビー級を統一する可能性が最も高いボクサーだと思います。
サミュエル・ピーターのプロフィール
本名 | サミュエル・ピーター |
誕生日 | 1980年09月06日 |
ニックネーム | ナイジェリアの悪夢 |
戦績 | 38戦34勝27KO4敗 |
獲得タイトル |
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