100年の時を越え、天才ロイ・ジョーンズが偉業達成!
ロイ・ジョーンズと同じ偉業を達成できるボクサーは21世紀中に現れないと思います。今回ロイ・ジョーンズが達成した偉業は、それほど実現困難なボクシングの歴史に残る快挙なんです。ミドル級出身のボクサーがヘビー級タイトルを獲得するなんて、常識では考えられないですからね。
1897年、ひとりのミドル級出身ボクサーが世界ヘビー級タイトルを獲得しました。そのボクサーの名はボブ・フィッシモンズ。ボクシングの試合が初めてビデオに収められた時代を戦い抜いたフィッシモンズは、もしかすると、彼が達成した偉業の大きさを自覚していなかったかもしれません。
フィッシモンズが世界ヘビー級タイトルを獲得したのは19世紀。20世紀にフィッシモンズと同じ偉業を達成したボクサーはひとりも現れませんでした。そもそも、リミット72.5キロのミドル級ボクサーが90キロ以上のヘビー級ボクサーに挑戦しようと思うこと自体、無謀なことですよね。しかし、20世紀最後の天才ボクサー、ロイ・ジョーンズは2003年3月、無謀な挑戦に勝利し、世界ヘビー級チャンピオンとなったのです。
ロイ・ジョーンズがジョン・ルイスの持つWBA世界ヘビー級タイトル挑戦を表明したとき、ボクシング評論家の意見は真っ二つに分かれました。ヘビー級のルイスがパワーでロイ・ジョーンズを押し切るという意見と、ロイ・ジョーンズが持ち前のスピードを活かし、ルイスにボクシングをさせないという意見です。
管理人は後者の意見、つまりロイ・ジョーンズがジョン・ルイスに勝利し、新チャンピオンになるという意見を支持していました。もちろん、ロイ・ジョーンズがルイスにKO勝ちすることは難しいので、試合のポイントはロイ・ジョーンズがどの体重でリングに上がるかです。
ロイ・ジョーンズが選んだ体重は87キロ。普段、ライトヘビー級で戦っているロイ・ジョーンズの体重は79キロです。この試合のため、8キロも増量したロイ・ジョーンズですが、ルイスの体重は102キロなので、両者の体重差は約15キロもあるんです。ボクシングで15キロの体重差を表すと、ロイ・ジョーンズが一番軽いミニマム級なら、ルイスが9階級上のスーパーライト級ということになります。ボクシングの常識では考えられない体重差ですが、結果的に天才ロイ・ジョーンズの輝きを最大限に引き出す体重差だったのかもしれません。
世紀の一戦はゴングがなると同時にチャンピオンのルイスが前に出る予想通りの展開。ルイスは体ごとロイ・ジョーンズをロープ際に押し込むのですが、効果的なパンチを打ち込むことはできません。逆に、ルイスの足が止まると、ロイ・ジョーンズがパンチを当てては離れる、見事なヒット・アンド・アウェイを決め始めます。
そして、迎えた4ラウンド。最高にシビれる瞬間が訪れます。ロイ・ジョーンズの右ストレートがルイスのアゴを捕らえ、ヘビー級チャンピオンのルイスがぐらついたのです。2003年に観戦したボクシングの試合で、これほどエキサイティングなパンチは他にありません。まさに「伝説の一撃」です。
「多少のパンチをもらっても大丈夫」と考えていたルイスに「まともにもらってはやばい」という危機感が芽生えたことで、試合の流れは完全にロイ・ジョーンズへ傾きます。ロイ・ジョーンズは中盤以降もヒット・アンド・アウェイに徹しながら、ディフェンスを大事に戦い、12ラウンド判定勝ちで106年ぶりの快挙を達成。
「パウンド・フォー・パウンド」は誰なのか?世紀の大一番は、その答えを改めて証明する舞台となりました。強すぎてライトヘビー級のボクサーから対戦を避けられ続けてきた天才ボクサーが100年の空白を埋め、完璧な勝利でヘビー級の新チャンピオンに輝いたのです。試合後のロイ・ジョーンズは顔に目立った傷もなく、充実感に包まれていました。