スピードと強打でヘビー級に革命を起こしたボクシング戦士
2009年11月、ボクシング史上最も背が高く最も重いヘビー級チャンピオンが、ひとりのボクサーの手によって王座を奪われました。革命戦士の名前はイギリス出身のデビッド・ヘイ。3団体のクルーザー級タイトルを統一した「クルーザー級最強のボクサー」が、悲願の世界ヘビー級タイトルを手にした瞬間でした。
重量級離れした圧倒的なスピードと急所を打ち抜く鋭いパンチでボクシング界に革命を起こし続けるデビッド・ヘイが初めて世界タイトルを獲得した階級はクルーザー級。プロデビューから5年後の2007年11月、デビッド・ヘイはジャン・マルク・モルメクが持つWBA・WBC世界クルーザー級タイトルに挑戦し、7ラウンドTKO勝ちで2本の世界チャンピオンベルトを手に入れます。
さらなる勢力拡大を狙うデビッド・ヘイは4か月後の2008年3月、WBO世界クルーザー級チャンピオンのエンゾ・マカリネリと3本のベルトをかけて激突。2ラウンドTKO勝ちという圧倒的な強さを誇示して王座統一に成功したデビッド・ヘイは、試合後ヘビー級へ転向を表明し、ついにヘビー級へ参入します。
ディフェンスとスタミナを強化しながら、ヘビー級で戦うための準備を重ねたデビッド・ヘイ。2009年11月、待ちに待った世界ヘビー級タイトルへ挑戦する日が訪れたのです。ボクシング史上最も背が高く最も重い世界チャンピオンのニコライ・ワルーエフと激突したデビッド・ヘイはスピードを武器にニコライ・ワルーエフに対抗し、悲願の世界ヘビー級タイトルを獲得。ボクシング界の革命戦士が2階級制覇を達成した瞬間です。
デビッド・ヘイが世界ヘビー級タイトルを獲得したことで、大型化が進むヘビー級の流れに終止符が打たれ、世界中のボクシングファンの興味は「デビッド・ヘイ対クリチコ兄弟(ビタリ・クリチコ、ウラディミール・クリチコ)」の実現に注がれ始めます。
レノックス・ルイス、マイク・タイソンの引退後、ヘビー級戦線の中心はいつもクリチコ兄弟でした。クリチコ兄弟の恵まれた体格と圧倒的なパワーがヘビー級を制圧し、「クリチコ兄弟に勝てそうなボクサーは見当たらないよ」という「クリチコ時代」が続いてきたのです。
しかし、デビッド・ヘイが世界ヘビー級タイトルを奪取したことで、「クリチコ時代」が終わりを告げる可能性が出てきました。そして迎えた2011年7月。ついにデビッド・ヘイとウラディミール・クリチコが拳を交えます。
対決の舞台はWBA・IBF・WBO世界ヘビー級王座統一戦。世界中のボクシングファンが待ち望んだ大一番です。「ヘイメイカーならウラディミールに一撃を叩き込めるかも」と大きな期待を寄せた管理人ですが、結果はウラディミール・クリチコに距離を支配され、大差の判定負け。「最後の希望」デビッド・ヘイの王座陥落で、ヘビー級主要4団体の世界タイトルがすべてクリチコ兄弟の手に渡った瞬間でした。
世界中のボクシングファンがデビッド・ヘイに「クリチコ時代の終焉」を期待するも、2011年10月13日、31歳の誕生日に現役引退を発表。全盛期のうちにリングに別れを告げる美学を貫いたデビッド・ヘイらしい引退でした。
重量級離れした圧倒的なスピードと一撃で相手をリングに沈める切れ味鋭いパンチで2階級制覇を成し遂げたデビッド・ヘイ。卓越したボクシングセンスとビッグマウスで楽しませてくれた雄姿はいつまでもボクシングファンの心に生き続けるでしょう。個性の大切さとボクシングの美学を教えてくれた名チャンピオンでした。
デビッド・ヘイのプロフィール
本名 | デビッド・ヘイ |
ニックネーム | ヘイ・メイカー |
誕生日 | 1980年10月13日 |
戦績 | 26戦25勝23KO1敗 |
獲得タイトル |
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