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アミール・カーン

抜群のスピードと速射砲のような連打で相手を圧倒するイギリスの「キング」

イギリス出身のアミール・カーンは、抜群のスピードから繰り出される速射砲のような連打を武器に世界の頂点へ駆け上がったスーパースターです。

ニックネームは「キング」。パンチのスピード、踏み込みのスピード、判断のスピードを駆使して対戦相手を圧倒する姿はボクシング界の王様ですね。

2004年、世界ジュニア選手権で優勝を飾ったアミール・カーンは、弱冠17歳でアテネオリンピックに出場し、銀メダルを獲得しました。

アマチュアで培ったテクニックとスピードを生かして「打っては離れるボクシング」を得意としています。「きれいなボクシングで打たせずに勝つこと」がアミール・カーンのボクシングの美学です。

アミール・カーンのボクシングを支えている最大の武器は速射砲のような連打。ガードの隙間や空いている場所を狙って、鋭いパンチをドンドン打ち込んできます。

対戦相手はディフェンスをすることで精一杯。相手に打ち返す時間を与えないアミール・カーンの連打は攻撃だけでなく、守備の役割も兼ねています。まさに「攻撃こそ最大の防御」ですね。

圧倒的なスピードを誇るアミール・カーンは2005年7月、1ラウンドTKO勝ちで鮮烈なプロデビュー。オリンピックで銀メダルを獲得したイギリス期待のホープは、わずか3年で18の連勝を積み重ねます。

この頃から「アミール・カーンはナジーム・ハメドが持つイギリス人ボクサーの最年少世界チャンピオン記録(21歳7か月)を更新できるか」という議論が熱を帯びてきます。

しかし、2008年9月、ブレイディス・プレスコットに1ラウンド衝撃のKO負けを喫し、まさかのプロ初黒星。試合開始20秒でブレイディス・プレスコットの強烈な左フックをもらったアミール・カーンは、立て続けに右ストレート、左フックを浴びてダウンを奪われます。

必死に立ち上がったアミール・カーンでしたが、再びブレイディス・プレスコットの強烈な左フックを浴びて勝負あり。アマチュア出身のエリートボクサーが荒々しい強打者の一撃に沈み、会場に詰めかけたイギリス人ファンの悲鳴が響いた瞬間でした。

しかし、このプロ初黒星がアミール・カーンを強く、たくましいボクサーへ変身させる大きな分岐点になります。再起をかけるアミール・カーンはホルヘ・ルビオからフレディ・ローチへトレーナーをスイッチすることを決意します。

マニー・パッキャオを「パウンド・フォー・パウンド」へ導いた「マスター」の指導を受けると、加速度的に力強さを増し、「打たせずに勝つボクシング」から「打たせずに打ち倒すボクシング」へスタイルチェンジします。

悲願の世界タイトル奪取へ向けて走り始めたアミール・カーンは2009年3月、メキシコの伝説「童顔の暗殺者」マルコ・アントニオ・バレラに5ラウンド負傷判定勝ちを収め、実力を証明。

新旧対決に快勝したアミール・カーンは2009年7月、初の世界タイトルマッチのチャンスを手にし、WBA世界スーパーライト級チャンピオンのアンドレアス・コテルニクに挑戦します。

結果は、アミール・カーンが持ち味のスピードを生かしたボクシングで攻防兼備のアンドレアス・コテルニクを圧倒し、大差の判定勝ちで世界チャンピオンベルトを獲得。「イギリスのキング」がプロのリングで頂点に輝いた瞬間でした。

悲願の世界タイトルを獲得したアミール・カーンは2009年12月、初防衛戦でディミトリー・サリタと激突。1ラウンドわずか10秒でダウンを奪うと、速射砲のような連打で合計3度のダウンを奪い、地元イギリスのファンを大熱狂させる完璧な1ラウンドTKO防衛に成功します。

初防衛から5か月後には、ポール・マリナッジとの英米スピードスター対決を制して11ラウンドTKO勝ち。アミール・カーンが鋭い左ジャブを有効に使い、「マジックマン」のニックネームを持つポール・マリナッジを完璧にコントロールした試合でした。

英米スピードスター対決に圧勝したアミール・カーンは2010年12月、宿命のライバルと拳を交えることになります。対戦相手は暫定チャンピオンのマルコス・マイダナです。

荒々しいファイトスタイルを持つ「アルゼンチンの倒し屋」はアミール・カーンが唯一の黒星を喫したブレイディス・プレスコットより好戦的。接近戦の打ち合いを得意とするパワフルなハードパンチャーです。

最大の試練に立ち向かったアミール・カーンは初回にボディーブローでダウンを奪います。序盤でリードを奪ったアミール・カーンですが、その後はマルコス・マイダナが盛り返して、一進一退の攻防が続きます。

7ラウンド以降はアミール・カーンがマルコス・マイダナの強打と手数に押される場面が目立ちましたが、結果は僅差の判定勝ちでアミール・カーンが王座統一に成功。試練の王座決定戦をクリアしました。

BWAA(全米ボクシング記者協会)の年間最高試合に選ばれた大激闘を制したアミール・カーンは2011年4月、故郷のマンチェスターでポール・マクロスキーと激突。全勝のポール・マクロスキー相手に6ラウンド負傷判定勝ちで4度目の防衛に成功します。3人のジャッジすべてがフルマークを与えた試合でした。

挑戦者を圧倒する防衛を重ねるアミール・カーンは2011年7月、IBFチャンピオンのザブ・ジュダーと王座統一をかけて激突。結果はアミール・カーンが5ラウンドKO勝ちで王座統一に成功します。「イギリスのキング」が新旧スピードスター対決に勝利し、ポテンシャルの高さを強烈にアピールした試合でした。

一気に頂点へ駆け上がり始めたアミール・カーンですが、2011年12月、思わぬ落とし穴が待っていました。2本のベルトを持つアミール・カーンはアメリカへ乗り込み、レイモント・ピーターソンと激突。1ラウンドにダウンを奪いますが、その後、レイモント・ピーターソンの攻撃的なボクシングに苦しみます。

結果はプッシングによる2度の1ポイント減点が響き、僅差の判定負け。ボクシングのエリート街道を突き進んできた「イギリスのキング」が敵地アメリカでレイモント・ピーターソンの「雑草魂」に屈し、王座から陥落した瞬間でした。

再起を誓うアミール・カーンは2012年5月にレイモント・ピーターソンと再戦を行う予定でしたが、薬物テストの結果、レイモント・ピーターソンからドーピングの陽性反応が認められ、リマッチはキャンセルになります。

路線変更を余儀なくされたアミール・カーンは2012年7月に全勝の快進撃を続けるWBC世界スーパーライト級チャンピオンのダニー・ガルシアと激突。しかし、合計3度のダウンを奪われる衝撃のKO負けで、プロ初の連敗を喫してしまいました。

窮地に追い込まれたアミール・カーンは2012年12月、無敗のカルロス・モリナと激突。序盤からスピードで圧倒したアミール・カーンは10ラウンド終了TKO勝ちを飾り、連敗をストップ。2011年7月以来の白星を手にしました。

連敗を脱出したアミール・カーンは2013年4月、地元イギリスでフリオ・ディアスと対戦。4ラウンドにダウンを奪われる苦しい展開でしたが、何とか逃げ切り、12ラウンド判定勝ち。スタイルチェンジの影響でしょうか?ボクシングに迷いが感じられる不安定な姿が印象的でした。

ウェルター級の肉体を作るため、1年間トレーニングを重ねたアミール・カーンは2014年5月、アメリカへ乗り込み、サウスポーのルイス・コラーゾと対戦。結果は3度のダウンを奪う快勝で存在感をアピールしましたが、同時に、ルイス・コラーゾの攻撃にバタバタしてしまう不安要素も見せてしまう良い部分と悪い部分が出てしまった復帰戦でした。

復帰戦で勝利を飾ったアミール・カーンは2014年12月、2階級制覇の実績を誇るデボン・アレキサンダーと激突します。結果は、アミール・カーンの12ラウンド判定勝ち。攻守のバランスを大事にしながら距離を取り、持ち味の回転の速い連打で主導権を握った大差の判定勝利でした。

黒星を転機に加速度的な成長を続けてきたアミール・カーン。圧倒的なスピード、速射砲のような連打に加え、力強さを手に入れた「キング」は逆境を跳ね除け、「イギリスのキング」から「世界のキング」へ躍進を遂げることができるでしょうか?ボクシング界の頂点へ向けた王様の行進は始まったばかりです。

アミール・カーンのプロフィール

ニックネーム キング
誕生日 1986年12月8日
戦績 33戦30勝19KO3敗
獲得タイトル
  • WBA世界スーパーライト級タイトル
  • IBF世界スーパーライト級タイトル
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