勇敢なハートと抜群のタイミングを誇る万能型のボクサーファイター
メキシコ出身のファン・マヌエル・マルケスは「打ち合ってよし、離れてよし」の万能型のボクサーファイターです。ストレート、フック、アッパー、どのパンチも強く打ち込むことができるだけでなく、顔面、ボディーへの打ち分けが抜群にうまいんです!
しかも、連打型のKOアーティストなので、手数が多く、試合はスリリング。対戦相手の突進力を利用したカウンターの名手で、メキシコだけでなく、世界的な人気を誇ります。簡単に言うと「ボクシングの幅がとんでもなく広いボクサー」です。
忘れてはいけないファン・マヌエル・マルケスの魅力が負けん気の強さ。打たれたら、必ず打ち返します。ダウンを取られても立ち上がり、打ち合ってピンチを脱出しようとするんです。
管理人の知る限り、これほど負けん気の強いボクサーはジョー・カルザゲとファン・マヌエル・マルケスだけです。ちなみに、管理人は、ミゲール・コット、セルヒオ・マルチネス、ミッケル・ケスラーと並び、ファン・マヌエル・マルケスを熱烈に応援しています。
世界的な人気と知名度を誇るファン・マヌエル・マルケスですが、プロボクサー生活は決して順風満帆ではありませんでした。1993年5月のデビュー戦でいきなりの黒星。さらに、1999年11月、初めての世界タイトル挑戦で、またしても黒星を喫してしまいます。
同じメキシコ出身のマルコ・アントニオ・バレラやエリック・モラレスが世界タイトルと世界的な名声まで一直線でたどり着いたのに対して、ファン・マヌエル・マルケスは少し遠回りをしたボクサーなんです。
遅咲きのファン・マヌエル・マルケスが初の世界タイトルを獲得したのは、デビューから10年目の2003年2月。マヌエル・メディナが持つIBF世界フェザー級タイトルに挑戦し、7ラウンドTKO勝ちで悲願の世界タイトルを奪取します。
「無冠の帝王」と呼ばれた「メキシコの勇者」が10年越しの夢をかなえて世界チャンピオンに輝いた瞬間でした。そして、ここからファン・マヌエル・マルケスが真価を発揮します。
2003年11月、WBA世界フェザー級チャンピオンのデリック・ゲイナーを7ラウンドTKO勝ちで下し、タイトルを統一。2004年には、アジア人初の3階級制覇を目指すマニー・パッキャオと対戦。1ラウンドに3度のダウンを奪われますが、驚異的な粘りで盛り返し、引き分けで防衛に成功します。
飛ぶ鳥を落とす勢いのマニー・パッキャオに引き分けたことで、ファン・マヌエル・マルケスの評価が一気に高まります。ファン・マヌエル・マルケスはすぐに再戦で決着をつけることを希望。しかし、ファイトマネーが折り合わず、再戦は中止となり、さらに、一定期間、防衛戦を行わなかったことで、2つの世界タイトルも剥奪されてしまいます。
この頃のファン・マヌエル・マルケスは完全にツキに見放された状態でした。2006年3月、WBA世界フェザー級チャンピオンのクリス・ジョンとインドネシアで対戦し、試合を有利に進めますが、地元判定に泣かされ、王座返り咲きならず。実力も人気も兼ね備えているのに、これほど運がないボクサーは珍しいですね。
それでも腐ることなく、再起を果たし、2006年8月にWBO暫定世界フェザー級タイトルを獲得。2007年3月、2階級制覇をかけてWBC世界スーパーフェザー級チャンピオンのマルコ・アントニオ・バレラに挑戦します。7ラウンドにダウンを奪われますが、判定でメキシコ人対決に勝利。2階級制覇を達成すると同時に、軽量級メキシカン第一人者の称号を手にします。
しかし、2008年3月「宿命のライバル」マニー・パッキャオと再戦を行い、僅差の判定で王座陥落。世界中のボクシングファンが注目した大一番で勝利することはできませんでしたが、「ファン・マヌエル・マルケス強し」を強烈にアピールする内容でした。
2008年9月には、ライト級へ階級を上げ、ホエル・カサマヨルと激突。2階級制覇を達成したホエル・カサマヨルのテクニックに苦戦を強いられますが、11ラウンドKO勝ちを飾り、再起戦に勝利します。ファン・マヌエル・マルケスの勝負どころを見極める能力、精神的な強さが発揮された見事な勝利でした。
2009年2月には、3階級制覇をかけて空位のWBA・WBO世界ライト級タイトルをファン・ディアスと争います。結果は芸術的なコンビネーションを叩き込み、9ラウンドKO勝ちで3階級制覇に成功。ファン・マヌエル・マルケスのテクニックと強靭な精神力が存分に発揮されたベスト・バウトに心が震えたファンも多いのではないでしょうか?
圧倒的な存在感を放ち、迎えた2009年9月。ファン・マヌエル・マルケスは復帰を果たしたフロイド・メイウェザーと激突。しかし、フロイド・メイウェザーの「時空を超越するスピード」に圧倒され、2ラウンドにダウンを奪われるなど、持ち味を全く発揮させてもらえず、12ラウンド大差の判定負け。悲しいまでの実力差を見せつけられた屈辱の敗戦でした。
35歳の年齢と絶望的な敗北を考えると、ショックで立ち直れず「引退」の二文字が頭に浮かんでもおかしくない状況だったと思います。しかし、2010年7月、不屈の闘志を誇るファン・マヌエル・マルケスはリングに戻ってきます。
再起戦でファン・ディアスと再び拳を交え、12ラウンド判定勝ち。「ファン・マヌエル・マルケス、健在」を世界中にアピールし、世界屈指のテクニシャンのボクシングを見せつけた試合でした。
2010年11月には、暫定チャンピオンのマイケル・カチディスと激突。3ラウンドに強烈な左フックでダウンを奪われたファン・マヌエル・マルケスですが、試合が進むにつれて盛り返し、9ラウンドに見事なコンビネーションを叩き込んで逆転TKO勝ちを飾ります。
「相変わらずの試合巧者ぶり」を発揮し、再び評価を高めたファン・マヌエル・マルケスは2011年11月、4階級制覇をかけて「宿命のライバル」マニー・パッキャオと3度目の激突。
圧倒的な攻撃力を誇るマニー・パッキャオを封じることに成功しますが、ディフェンスを重視したため、ファン・マヌエル・マルケス自身もパンチが少なく、結果は12ラウンド僅差の判定負け。またしてもマニー・パッキャオの牙城を崩すことはできませんでした。
ライバルとの最終決戦に敗れたファン・マヌエル・マルケスですが、闘争心を失うことなく、2012年4月、4階級制覇を目指してリングに復帰。WBO世界スーパーライト級暫定タイトルをかけてセルゲイ・フェドチェンコと激突し、12ラウンド大差の判定勝ち。メキシコ人ボクサー3人目の4階級制覇を達成しました。
4階級制覇を成し遂げたファン・マヌエル・マルケスは2012年12月、悲願の初勝利を目指してマニー・パッキャオと禁断の第4戦で激突。結果は、世界中のボクシングファンの度肝を抜く6ラウンドTKO勝ち。必殺のカウンターでライバルを失神させる完璧な勝利でした。
宿命のライバルを撃破したファン・マヌエル・マルケスは2013年10月、5階級制覇をかけてティモシー・ブラッドリーと激突。しかし、結果は無念の12ラウンド判定負け。スピードを重視するティモシー・ブラッドリーに、最後までパンチを打ち込むことができなかった不本意な敗戦でした。
再起を目指すファン・マヌエル・マルケスは2014年5月、復活をかけてマイク・アルバラードと激突します。結果は、倒し倒されの激闘の末、12ラウンド判定勝ち。終盤にパンチを浴びて、危ない場面はありましたが、的確なコンビネーションと試合運びのうまさを改めて印象付ける復活でした。
勇敢なファイトスタイルと卓越したテクニックで世界中のボクシングファンを魅了するファン・マヌエル・マルケス。ファン・マヌエル・マルケスの勇姿を観戦するたびに「ダウンを奪われることも多いけど、そこから立ち上がって逆転するもんな。絶対にあきらめない姿が、めっちゃかっこいいよ!」と勇気をもらっています。
ファン・マヌエル・マルケスのプロフィール
誕生日 | 1973年8月23日 |
ニックネーム | ダイナマイト |
戦績 | 64戦55勝40KO7敗1分 |
獲得タイトル |
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