スーパーミドル級12回戦
挑戦者のケリー・パブリックがチャンピオンのジャーメイン・テイラーを7ラウンドTKOで下し、WBCとWBO世界ミドル級タイトルを獲得した初対決からわずか5ヶ月。両雄が再び拳を交える今回のリターンマッチは、166ポンドの契約ウェイトで行われます。そのため、パブリックが持つ世界ミドル級タイトルはかけられませんが、お互い減量に苦しむことなくリングへ上がることができます。
一説によると、166ポンドの契約ウェイトを熱望したのは前チャンピオンのテイラー。細身で減量に悩まされているように見えないのですが、テイラーのベストウェイトは166ポンドだそうです。テイラーにとっては言い訳できない条件がそろっていますが、なぜチャンピオンのパブリックはテイラーが望むリスキーな条件を飲んだのでしょうか?たぶん「初戦でパブリックがテイラーに勝ったのはまぐれだよ」と言わせないためでしょう。全勝で世界タイトルを勝ち取ったパブリックのプライドが相手の土俵で戦うことを選ばせたのです。
因縁の再戦は前回より静かな試合となりました。静かな試合となった理由はお互いがお互いの持ち味を消す戦い方をしたからです。初戦でテイラーの連打をもらってダウンした苦い経験を活かし、好戦的なパブリックがガードをガッチリと上げて戦います。一方、テイラーも不必要な接近戦、打ち合いを避け、素早いジャブと右ストレートを中心にアウトボクシングを展開します。
中盤まで大変競った試合でしたが、試合が進むにつれて体格、体力で勝るパブリックが試合を支配する時間が増え、ポイントを奪取。結果は3-0の12ラウンド判定でパブリックがテイラーを返り討ちにし、全勝を守りました。
パブリックは確かに強いボクサーですが、管理人の評価はそれほど高くありません。好戦的なボクサーでKO率は高く、絶大な人気を誇りますが、ボクシングが粗く、相手のパンチをまともにもらう場面が目立ちます。実際、このリターンマッチではテイラーのパンチが何度もクリーンヒットしていました。
しかし、テイラーは何度戦ってもパブリックに勝てない気がします。オスカー・デラホーヤがシェーン・モズリーに勝てないのと同じで相性の問題だと思います。テイラーはパブリックのように長身でパンチとスタミナがあるボクサーが苦手なのでしょう。
テイラーが世界ミドル級タイトルを奪い取ったバーナード・ホプキンスと違って、パブリックは手数が多いボクサーですからね。パンチのスピード、パンチを当てる上手さ、カウンターのタイミングはテイラーのほうが断然上ですが、パブリックの手数と力強さがテイラーの良さを帳消しにしてしまうんです。それにしても、プレッシャーをかけてパンチを出し続けるパブリックのスタミナは見事ですね。パブリックのボクシングはわかりやすいので、人気が出るのも納得です。
勝ったパブリックはもちろん、負けたテイラーもパンチや動きにキレがあったので、まだまだ世界のトップ戦線で戦えますよ。パブリックはミドル級に残ることを表明しましたが、テイラーは再び世界タイトルを狙うため、スーパーミドル級へ階級を上げるかもしれませんね。パブリック対テイラーの再戦は「ボクサーの相性」について考えさせられる試合となりました。