スーパーウェルター級12回戦
ボクシング界のカリスマ、オスカー・デラホーヤが故郷、カリフォルニアにスティーブ・フォーブスを迎えて1年ぶりの復帰戦を行います。デラホーヤにとって今回の復帰戦は2007年、フロイド・メイウェザーに2対1の判定で敗れて以来のファイトです。スピードのあるテクニシャン、フォーブスを復帰戦の相手に選んだということは、9月に再戦が噂されるメイウェザーを意識してのマッチアップでしょう。今年で引退を公言する35歳のデラホーヤがどこまで動けるのか、注目が集まります。
試合は序盤からデラホーヤのペースで進みます。試合前は、フォーブスに比べて、体が一回り大きなデラホーヤが体格差を活かして前に出てくると思いましたが、予想に反して、デラホーヤが左ジャブを中心にパンチのスピードとコンビネーションを重視した戦い方を展開。
階級が上がるにつれて、手数、特に左ジャブの数が減ってきたデラホーヤですが、この試合は左ジャブがよく出ています。デラホーヤは一発で相手を倒すタイプではなく、コンビネーションで相手を倒すタイプ。昔のデラホーヤに戻ったような戦い方です。手数が多ければ、競った試合でポイントを取りやすいですし、このあたりもメイウェザーとの再戦を考えた上の戦略でしょう。
フォーブスがディフェンスの上手いタフなボクサーのため、KOこそできませんでしたが、試合は終始デラホーヤが支配し、12ラウンド判定で復帰戦を勝利で飾りました。1年ぶりの復帰戦であること、対戦相手がフォーブスであることを考えれば、内容的にはまずまずだと思いますが、試合後、管理人は「観てはいけないものを観てしまったような感覚」に包まれてしまいました。
この試合のデラホーヤは左ジャブをよく突き、左フックをボディー、顔面に散らしながらパンチのスピードとコンビネーションで戦う、デラホーヤ本来のスタイルだったと思います。しかし、残念なことに肉体的な衰えは隠しきれませんでした。特にスタミナ不足は深刻です。デラホーヤは管理人が大好きなボクサーなので、認めるのは辛いのですが、もはやデラホーヤには12ラウンドを戦い抜くスタミナがないのではないでしょうか?
デラホーヤのスタミナ不足は、厳しい練習を積めば戻るレベルの話ではなく、これまでのボクサー人生で蓄積された疲労によるものだと思います。アイク・クォーティーと戦った頃(1999年)のデラホーヤは中盤にダウンを奪われながらも、最終ラウンドに驚異的なラッシュを繰り出すだけのスタミナがありました。しかし、この試合のデラホーヤは6ラウンドくらいからスタミナに不安を抱えながら戦っていたように思えます。チャンスがあっても「ここでスタミナを使ってしまったら、12ラウンド戦えない」という不安が脳裏をよぎり、勝負に出られなかったのでしょう。
管理人の考えるデラホーヤの弱点は、スタミナ不足とボディーの弱さです。実際、この試合もフォーブスのボディーブローを嫌がる場面がありました。もしデラホーヤがミゲール・コット、アントニオ・マルガリート、リッキー・ハットンなど、ボディーブローを得意とするタフなボクサーと対戦した場合、ボディーブローでKO負けする可能性もあると思います。
今年で引退を公言するデラホーヤ。5月、9月、12月に3試合を戦い、引退するという決心は固く、ボクサーとしてリングに上がるデラホーヤの勇姿を観ることができるのは今年で最後になるでしょう。世紀をまたいでボクシング界を牽引してきた「ゴールデンボーイ」。引退へのカウントダウンは「イバラの道」となるのか?「ゴールデンロード」となるのか?ボクシング史上唯一の6階級制覇を達成した「伝説の男」の行方に注目です。