ショーン・ポーターに完敗のポール・マリナッジが引退の可能性を示唆
2階級制覇の実績を誇る「マジックマン」は引退してしまうのでしょうか?数々の強豪と対戦し、ボクシング界屈指の「くせ者」として知られるポール・マリナッジが4ラウンドTKO負けを喫したショーン・ポーター戦を振り返りながら、引退の可能性を示唆しました。
「正直に言うと、ポーターがあれだけのパワーを身につけているなんて、全く想像してなかったよ。オレのキャリアを知っているファンなら、わかってもらえると思うんだけど、過去にパンチ力のあるボクサーと何度も対戦してきた。でも、ポーターより強烈なパンチをもらったことはなかったよ。強烈なパンチを何度も浴びて、痛めつけられ、試合後は病院送りだ」
「病院へ行ったあと、はき気が止まらず、何度も嘔吐(おうと)したよ。ミゲール・コットに眼窩底骨折(がんかていこっせつ)させられたことがあったけど、今回のダメージに比べたら、ましだった。ポーター戦の完敗で、引退について真剣に考えるようになったんだ。ボクサーとして考えると、オレは決して若くない。進退について、ゆっくり考えて、続行するかどうかを決断するよ」
ううう、めっちゃ切ないなあ。ボクシングファンの皆さんがご存知のように、ポール・マリナッジは「KO率の低いボクサー」の代表格です。でも、管理人にとって、ポール・マリナッジは「ボクシングはKOだけじゃないよ」って、教えてくれたボクサーでもあります。「ジャブの帝王」の異名を誇る圧倒的な手数と常にポジションを変えて動き続けるボクシングは「プロで生き残るための個性」です。
ポール・マリナッジは10代の頃、何度も拳を骨折して「ケガを覚悟で強いパンチを打ち続けることを優先するべきか、拳を守りながら戦い続けることを優先するべきか」を選択することになり、後者を選びました。プロボクシングの世界では、KO率が低いと、どうしても、地元以外でウケが悪くなってしまいます。「つまらない」という烙印を押され、批判の対象になることも少なくありません。
でも、ポール・マリナッジは、躍動感のあるボクシングと持ち前のパフォーマンス精神で全米ファンのハートをキャッチし、着実に人気を獲得しながら、2制覇制覇を達成。しかも、対戦したボクサーは、ミゲール・コット、エイドリアン・ブローナー、ザブ・ジュダー、リッキー・ハットンをはじめ、人気と実力を兼ね備えた激戦区の実力者ばかりです。
試合中に髪の毛を切ったこともありました。ショーン・ポーター戦の計量シーンは「放送コード」ギリギリで大笑いしてしまいました。ヒラヒラのトランクスを身にまとい、相手のパンチを「ひょい」とかわして、先手先手の左ジャブで主導権を握る「マジックマン」。逆境に打ち勝つ「個性」の大切さを教えてくれたポール・マリナッジの勇姿を観戦することはもうできないのでしょうか?
「たくさんの批判を受けながらボクシングを続けることができた理由は、応援してくれるファンがいたから、そして、ボクシングが大好きだからだ。どんな決断をすることになっても、ずっとボクシングに関わりたい。リングの中で仕事を続けるか、リングの外の仕事(解説者)を選ぶか、もうしばらく時間をくれないか?」。引退か?続行か?岐路に立つ「マジックマン」の決断はいかに?