反骨の王様は沈まず！49連勝を飾ったフロイド・メイウェザーが公式に引退を発表

積み重ねた49の勝利。ボクシング界の頂点に君臨する5階級制覇チャンピオンのフロイド・メイウェザーは9月12日（日本時間9月13日）に開催された「最終戦」でアンドレ・ベルトに12ラウンド判定勝ちを飾り、プロデビューから一度も負けることなく、49連勝を飾りました。

試合後に行われたインタビューで「公式に引退するよ」と力強く言い放ったフロイド・メイウェザー。オスカー・デラホーヤ、マニー・パッキャオ、ミゲール・コット、サウル・アルバレス、ファン・マヌエル・マルケス、シェーン・モズリーをはじめ、19年のキャリアで世界中の強豪を撃破した「ボクシング界の王様」は、49戦全勝26KOのレコードを残し、リングに別れを告げました。

ラストファイトとなったアンドレ・ベルト戦は「メイウェザーがたくさんのファンとアンチを抱える理由が詰まった試合」でした。1ラウンド開始30秒、アンドレ・ベルトの左ジャブに対して、フロイド・メイウェザーが右ストレートのカウンターを狙います。しかし、アンドレ・ベルトは間一髪でブロックし、鋭い左ジャブで、フロイド・メイウェザーにプレッシャーをかけます。

立ち上がりは「ベルト、めっちゃ集中してるよ。シャープな左ジャブでロープへ追い込んで、序盤から総攻撃したいなあ」という期待感がありました。ところが、2ラウンドに入り、フロイド・メイウェザーが大きく動きはじめ、アンドレ・ベルトに迷いが生まれます。パンチを出しても届かない。距離を詰めようとしても逃げられる。見慣れた光景が目の前に広がりました。

最終ラウンドは、フロイド・メイウェザーがアンドレ・ベルトにダメージを与えて「あと一発！左フックが当たればKOできるよ」という完璧なシナリオでした。ところが、残り10秒、最も美しいエンディングは破棄されます。拳を突き上げ、リングを大きくサークルした姿が「プロボクサー」フロイド・メイウェザーの信念であり、プライドであり、そして「天才の限界」なのかもしれません。

いろいろなご意見があると思いますが、管理人は「メイウェザーはKOを狙ったんじゃないかな？」と感じました。特に、4、11、12ラウンドは「ベルトが踏み込んだら、強く打とう」と感じるラウンドでした。一方で「KOを狙ったけど、KOできなかった事実も引退する理由なのかな？本当に頭のいい選手なんで、誰よりも自分の状態をわかっているはずだもん」と感じたことも否定できません。

母国アメリカで開催されたアトランタ五輪で「絶対に勝っていた試合」でまさかの負けを宣告され、金メダルを逃したフロイド・メイウェザー。バルセロナ五輪で金メダルを獲得した「ゴールデンボーイ」オスカー・デラホーヤと同じスーパースター街道は閉ざされてしまいました。

プロ転向後、オスカー・デラホーヤとマニー・パッキャオの「2大ベビーフェイス」の陰に隠れ、不遇の時代が続いた「天才」フロイド・メイウェザー。しかし、時空を超越するスピード、鉄壁のディフェンス、負けず嫌いな性格を押し出したマイクパフォーマンス、精力的なプロモーションを駆使して「誰も通ったことがないイバラのスーパースター街道」を歩き続けました。

リングの中で誰よりもパンチをもらわなかったフロイド・メイウェザーは、リングの外で誰よりもパンチを浴びたボクサーです。批判にさらされ、バッシングに耐えながら「パウンド・フォー・パウンド」の地位を守り抜いた「孤高の天才ボクサー」。一度は「時代」に背を向けられたフロイド・メイウェザーですが、負けないボクシングと圧倒的な集客力を駆使して「時代」を引き寄せました。

フロイド・メイウェザーの「もし」が実現するなら「ベビーフェイスのメイウェザー」を観戦したかったです。ボクシングファンの皆さんと「世界中のファンが大声援を送って、メイウェザーがすべてを解き放ったら、見たことのないボクシングの世界が広がるんじゃない？」と何度も語り合った夢物語は残念ながら一度も実現しませんでした。

逆に言うと、ベビーフェイスに転向できなかった悲運が、フロイド・メイウェザーをボクシング界の頂点に君臨させ続けた原動力だったことは間違いありません。誰よりも速く、誰よりも芸術的で、誰よりも賛否両論だった「反骨のスーパースター」。積み重ねた49の勝利は「勝ち続けることでしか証明できない苦しみを背負った反骨の王様の宿命」だったのかもしれませんね。