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ハイチ出身初の世界王者、ジョアシム・アルシン登場

WBA世界スーパーウェルター級タイトルマッチ

チャンピオン ジョアシム・アルシン(カナダ・ハイチ出身)
戦績:29戦全勝18KO
挑戦者 アルフォンソ・モスケラ(パナマ)
戦績:24戦19勝7KO5敗

試合内容

ハイチ共和国出身のボクサーとして、初めての世界チャンピオンに輝いたジョアシム・アルシン。当時のWBA世界スーパーウェルター級チャンピオン、トラビス・シムズに挑戦した2007年7月のタイトルマッチは、アルシンの良さばかりが際立つ試合展開で、全勝のスイッチヒッター、シムズから完璧な判定勝ちを収め、世界中のボクシング関係者とボクシングファンに衝撃を与えました。

特に、体全体のバネを活かした的中率の高い強打は対戦相手にとって脅威です。また、相手のラッシュをシャットアウトする鉄壁のガードも大きな魅力。「相手に打たせない強打者」は長期政権を築く可能性が高いですからね。

シムズとの全勝対決を制し、ボクシング史にその名を刻んだハイチの英雄が、第二の故郷カナダにパナマ出身のアルフォンソ・モスケラを迎えた初防衛戦は、「チャンピオンが挑戦者を何ラウンドでKOできるか」に注目が集まります。

試合は開始直後からチャンピオンのアルシンが体格的なアドバンテージを活かし、前へ出ようとしますが、挑戦者のモスケラも必死に体を預けながら、打ち合いに応じます。両者の身長差が10センチほどあるでしょうか?アルシンのほうが随分高いのですが、挑戦者のモスケラがアルシンの強打を恐れず、懐に入り、左右のフックを中心に積極的にパンチを繰り出し、試合のペースを握ります。

一方、アルシンはいわゆる「攻防分離のボクシングスタイル」で、相手が攻めている間は攻撃をせずに、ガードをしっかり固めて守るため、クリーンヒットこそもらいませんが、攻められっぱなしの展開が続きます。

ただでさえ難しいと言われる初防衛戦に加えて、第二の故郷カナダで戦うプレッシャーを感じてか、この日のアルシンは「絶対にKOで勝ってやる!」という気持ちだけが先走り、普段より全体的に力が入りすぎていて、リズムが悪く、手数が少ないために、挑戦者のモスケラを簡単に懐に入れてしまい、ペースを奪われる最悪の展開。

「あれれ?このままのペースだと、アルシンが負けちゃうかも」と思い始めた4ラウンド。ロープを背にガードを固めてモスケラの猛攻を耐えたアルシンが、連打終わりにスキが生まれたモスケラの顔面に右フックから左右のワンツーを打ち込み、この試合初めてモスケラがグラつかせるシーンを作ります。

一瞬で流れを変えてしまう一撃の威力と的確な強打はさすがアルシン!

「この調子で、小さく回転の速い連打を打ち込んでいけば終わりも近いかな」と思ったのですが、5ラウンド以降もアルシンの手数は少なく、モスケラに体力回復の時間を与えてしまいます。

ポイントは取っているものの、本調子ではないアルシンに対して、挑戦者のモスケラは想像以上の出来で、ボディーブローを中心に手数で応戦しながら「嫌なボクシング」を展開します。もしモスケラにパンチ力があれば、違う展開になっていたかもしれません。

8ラウンドに入ると、アルシンと互角の勝負をするため、前半でスタミナのほとんどを使ったモスケラの動きが目に見えて鈍くなってしまいます。こうなると、試合の流れは一気にチャンピオン、アルシンへ傾きます。ディフェンスを大事にしながら、モスケラの攻撃終わりを待って、的確なパンチを集めることで、確実にダメージを与えていきます。

そして、迎えた12ラウンド。ポイントは完全にアルシンがリードしています。試合の見所はアルシンがKOで勝てるかどうかの一点に絞られました。ゴング直後から積極的に前へ出るチャンピオンのアルシン。フラフラになりながらも何とか判定まで持ち込みたいモスケラ。

観客のブーイングが聞こえ始めた1分30秒、アルシンの右ストレートがロープを背に戦うモスケラの顔を跳ね上げ、さらに強烈な左フックをテンプルに打ち込み、観客が待ち望んだダウンを奪います。「うおおお、これは決まったな」と思ったのですが、挑戦者のモスケラが執念で起き上がり、試合続行。しかし、一気に勝負を決めたいアルシンが左右の連打から右フックを顔面に叩き込み、モスケラはその場に崩れ落ちます。

何とか立ち上がるモスケラですが、もう戦えるだけの気力、体力ともに残っていないのか、レフェリーのカウントを聞きながら、セコンドを横目で確認します。セコンド、レフェリーの判断はともに試合続行。しかし、試合再開後すぐにアルシンの強烈な右ストレートを食らったところで、レフェリーストップ。アルシンが12ラウンドTKOで初防衛に成功しました。

最後は見事なTKOでタイトル防衛に成功したアルシンでしたが、この試合はプレッシャーが影響してか、本調子とは程遠いものでした。アルシンは、バーノン・フォレストやコーリー・スピンクスなど、実力者が集まるスーパーウェルター級戦線でカギを握る存在となれるかどうか?次の防衛戦もアルシンの真価が問われる一戦になりそうです。

試合結果

試合結果 ジョアシム・アルシンが12ラウンドTKO勝ちで初防衛に成功
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