WBC世界ウェルター級王座決定戦
WBC世界 ウェルター級1位 |
アンドレ・ベルト(アメリカ) 戦績:21戦全勝18KO |
WBC世界 ウェルター級2位 |
ミゲール・ロドリゲス(メキシコ) 戦績:31戦29勝23KO2敗 |
試合内容
最強ボクサーの称号、「パウンド・フォー・パウンド」を誇ったフロイド・メイウェザーが2008年6月に引退を表明し、空位となったWBC世界ウェルター級タイトルをランキング1位のアンドレ・ベルトと2位のミゲール・ロドリゲスが争います。
注目はやはりベルトですね。アテネオリンピックにハイチ代表として出場後、プロに転向。デビュー後は21戦全勝18KOと申し分のない戦績で、今回が世界タイトル初挑戦になります。リーチ差のある長身強打のメキシカン、ロドリゲス相手にどんなボクシングを展開するのか?メイウェザーの後継者を決める王座決定戦は、次期スターの誕生を予感させる内容となりました。
試合開始からペースを握ったのはランキング1位のベルト。リーチ差のあるロドリゲスに対して、まずはガードを固めて、左ジャブで距離を測ります。そして、距離の測定が終わると、強烈な右ストレート、右フックを武器に試合を有利に進めます。ベルトとロドリゲスの距離はかなり違うのですが、ベルトは圧倒的な踏み込みの速さで距離の差を全く感じさせません。身長、リーチで上回るロドリゲスを動きとパンチのスピードで圧倒します。
2ラウンド以降、ベルトの勢いがますます加速します。1分過ぎには、ロドリゲスの左ジャブに対して強烈な右クロス。さらに、3ラウンド1分過ぎには、突破口を見つけようと懐に飛び込むロドリゲスに対して左ボディーブローのカウンターを打ち込みます。上下の打ち分けが効果的で、パンチも力強いですね。
6ラウンドに入ると、ダメージの見え始めてきたロドリゲスに対して、左フックを顔面、ボディーへ打ち分け、完全に試合を支配。そして、迎えた7ラウンド、次期チャンピオンと支持され続けた男が、次期スターの誕生を予感させるボクシングを披露します。
7ラウンド開始20秒、右フックでロドリゲスの態勢を崩したところに、強烈な右アッパーで、この試合初のダウンを奪います。何とか立ち上がるロドリゲス。ここからベルトがクレバーな戦いを披露します。立ち上がったロドリゲスに対して、ダメージを確認しながら、パンチを急所、急所に集め、さらなるダメージを与えます。ロドリゲスのラッキーパンチをもらわず、確実に仕留めようとするベルトの見事な作戦です。
そして、1分40秒過ぎにロドリゲスをロープへ追い詰め、左フックから右ストレートで2度目のダウン。さらに立ち上がったロドリゲスに対して左右のフックを連打し、レフェリーストップを呼び込みます。この瞬間、ベルトがメイウェザーの後継者としてWBC世界ウェルター級チャンピオンに輝きました。敗れたロドリゲスは弱くないどころか、世界チャンピオンになってもおかしくないほどのパンチ力とタフさを持っていると思うのですが、相手が悪かったですね。
世界チャンピオンになったベルトですが、かなり強いです。生半可な強さじゃないですよ。タイトルに「メイウェザーの後継者」と書きましたが、ベルトはメイウェザー級のボクサーになる可能性がある逸材だと思います。右ガードをこめかめにくっつけて、左手を下げるボクシングの構えはメイウェザーそっくり。ベルトはメイウェザーのボクシングを参考にして、そのボクシングを見事に吸収していると思います。
まだまだ攻撃、防御とも粗い部分がありますが、パンチ力と突進力はメイウェザーより上ですね。スピード感のあるベルトの攻撃は迫力満点で、かなり魅力的ですよ。あの迫力で攻撃的なボクシングを貫けば、試合を重ねるたびに人気が出ることは間違いないでしょう。ボクシング界を背負うスターになる可能性もありますよ。
今後はディフェンスとスタミナ強化が課題になると思います。この試合も4ラウンドにロドリゲスに押し込まれて左フックをまともにもらうシーンがあったのですが、体格で上回る相手と戦う場合、押し合いに必要なスタミナがないと、ラウンドが進むにつれて厳しくなるので、スタミナ強化は急務ですね。また、ロープに追い詰められたとき、押し合うだけでなく、左フックや右フックを当てて、回り込むテクニックも覚えると、小柄なベルトにとっては役に立つと思います。
ボクシング全17階級で最激戦区と言われるウェルター級のチャンピオンに輝いたベルト。「パウンド・フォー・パウンド」の称号を手にいれ、5階級制覇を達成した伝説のチャンピオン、メイウェザーの引退が、アンドレ・ベルトというボクシング界の新しい伝説を生み出すことになるかもしれません。ベルトの戦いに今後も注目ですね。
試合結果
試合結果 | アンドレ・ベルトが7ラウンドTKO勝ちでフロイド・メイウェザーが返上した世界タイトルを獲得。 |