NABF北米ウェルター級タイトルマッチ
チャンピオン | アンドレ・ベルト(アメリカ) 戦績:20戦全勝17KO |
挑戦者 | ミヒェル・トラバント(ドイツ) 戦績:47戦43勝19KO2敗1分1無効試合 |
試合内容
全17階級で最もチャンピオンになるのが難しいと言われる階級がウェルター級です。WBAチャンピオンがミゲール・コット、WBCチャンピオンがフロイド・メイウェザー、IBFチャンピオンがカーミット・シントロン、WBOチャンピオンがカルロス・キンタナ、そして有力世界ランカーにアントニオ・マルガリート、シェーン・モズリー、リッキー・ハットンなど人気、実力を兼ね備えたボクサーが名前を連ねる激戦区です。
そのウェルター級の有力世界ランカーで、管理人が最も注目しているボクサーが、今回登場するアンドレ・ベルトです。アテネオリンピックに出場後、プロに転向して以来、現在20連勝中のホープ。並みの階級なら、もうすでにタイトルを獲得していてもおかしくないほどの実力を持っているボクサーです。ベルト最大の魅力は圧倒的な攻撃力。左、右に関係なく全てのパンチが強く、しかも回転が速いんです。特にラッシュ時の迫力は全盛期のマイク・タイソンを彷彿とさせ、相手のガードごと吹き飛ばすパンチは魅力的ですね。さらにパンチの的中率が高いので、対戦相手にとってはかなり厄介です。
今回の対戦相手、ミヒェル・トラバントは世界タイトル挑戦経験を持つベテランボクサー。決してパンチがあるボクサーではありませんが、ドイツ出身らしく、鉄壁のディフェンスと堅実な試合運びをモットーとしたミスの少ないボクシングを展開する曲者です。ウェルター級注目のホープがヨーロッパの刺客を撃破し、世界タイトル獲得の布石とできるか、今後のウェルター級戦線の行方を大きく左右する試合は序盤からベルトがペースを握ります。
ベルトはゴングが鳴ると同時に左ジャブを中心に積極的にパンチを繰り出し、トラバントにプレッシャーをかけ続けます。トラバントは両ガードを上げて、クリーンヒットを防ぐのが精一杯。ベルトは捨てパンチがなく、どのパンチも強いので、トラバントは手を出しにくいのでしょう。パンチを出した瞬間に、強烈なカウンターが飛んできたら、その瞬間に試合が終わってしまうかもしれませんからね。
3ラウンドに入ると、ベルトが戦い方を変えてきます。トラバントの鉄壁のガードの前に、自慢の左フックと右ストレートがブロックされてきたベルトが、左ボディーブローと右のアッパーカットを多用し、回転の速い上下のコンビネーションを効果的に打ち込んできます。これだけのパンチ力を誇るボクサーが、回転の速い上下のコンビネーションを使いはじめると、対戦相手はたまったものではありません。ベルトのパンチが少しずつトラバントにクリーンヒットする場面が目立つようになります。
5ラウンド終了間際には右ストレートがトラバントの顔面をクリーンヒットし、トラバントの腰が落ちますが、ゴングに救われます。もう少し時間があれば、ダウンシーンが観られそうなラウンドでしたが、昇り調子のベルトにとっては関係なかったようです。6ラウンドが始まると、左右のフック、左ボディーブローを集中砲火。トラバントはフラフラになりながら、何とか耐えますが、ラウンド終了後にセコンドが続行不可能をレフェリーに告げ、ベルトがTKO勝ちでタイトル防衛に成功します。
ベルトの強さ、特に破壊的な攻撃力だけが目立った試合でした。攻撃力だけを考えると、ウェルター級でトップ5に入るでしょう。ベルトはスタミナや打たれ強さなど未知数な部分もありますが、すぐにタイトルマッチに挑戦できる実力を持っています。あの攻撃力は対戦相手にとって本当に脅威ですよ。スピードがあるのも魅力ですね。
今後はどの団体のチャンピオンに挑戦するかがポイントになると思います。ベルトは現在WBC世界ウェルター級1位ですが、WBCチャンピオンのフロイド・メイウェザーは全階級最強の称号「パウンド・フォー・パウンド」を持つ、スーパーチャンピオン。現在の両者の戦闘力を比較すると、ベルトがメイウェザーに勝つ可能性はゼロに近いでしょう。
管理人は、WBAチャンピオンのコットとWBCチャンピオンのメイウェザーに挑戦するのは少し時期尚早だと思いますが、IBFチャンピオンのシントロンか、WBOチャンピオンのキンタナに挑戦できればタイトル獲得のチャンスはかなり大きいと思います。いずれにしてもベルトにとって2008年は勝負の年になるので、今後も注目のホープから目が離せませんね。
試合結果
試合結果 | アンドレ・ベルトが6ラウンド終了TKOで防衛に成功 |