IBF世界ウェルター級タイトルマッチ
チャンピオン | カーミット・シントロン(プエルトリコ) 戦績:30戦29勝27KO1敗 |
挑戦者 | アントニオ・マルガリート(メキシコ) 戦績:41戦35勝25KO5敗1無効試合 |
試合内容
一撃必殺の右ストレートでKOの山を築くカーミット・シントロン。脅威のKO率(90%)を誇るプエルトリコ出身のハードパンチャーです。ニックネームは「キラー(殺し屋)」。強豪が集うウェルター級でも、カミソリのような切れ味を持つシントロンのパンチは際立っていますね。
シントロンはこれまで30試合戦って負けたのはわずかに一度だけ。プロ唯一の黒星を付けられた相手が、今回の挑戦者、アントニオ・マルガリートです。マルガリートの魅力は最終ラウンドでも連打を繰り出せる圧倒的なスタミナと打たれ強さ。「ティファナの竜巻」のニックネーム通りの攻撃的なボクシングをするファイターで、とにかくタフなんです。
シントロンとマルガリートは2005年に一度対決しています。当時はマルガリートがWBO世界ウェルター級の正チャンピオン、シントロンが暫定チャンピオンで、無敗のシントロン有利の声も聞こえましたが、結果はマルガリートがシントロンを圧倒し、5ラウンドTKO勝ち。
今回のタイトルマッチが3年ぶりの再戦となるわけですが、前回と違う点はシントロンがチャンピオン、マルガリートが挑戦者という二人の立場です。チャンピオンのシントロンが精神的に有利になれるか?それとも一度勝っているマルガリートが精神的に有利になれるか?強打者同士の再戦は予想通りの展開で始まりました。
1ラウンドからペースを握ろうと、シントロンとマルガリートのパンチが飛び交います。中距離の打ち合いを得意とするシントロンに対して、接近戦の打ち合いを得意とするマルガリートはシントロンの懐に入ろうとしますが、シントロンは左ジャブと左右のアッパーを強振し、マルガリートの前進を食い止めようとします。
しかし、マルガリートはまともにシントロンのパンチをもらいながらも少しずつシントロンの懐で勝負するようになり、シントロンが嫌になるほどの連打を顔面、ボディーへ打ち分けます。特にマルガリートの左ボディーブローはシントロンの体が沈むほど強烈。徐々にシントロンの苦痛の表情が目立つようになります。
シントロンも自慢の強打をマルガリートにヒットさせ、反撃するのですが、マルガリートのタフさは尋常じゃないですね。本当に打たれ強いです。そして、この打たれ強さこそ、シントロンとマルガリートの決定的な差なんです。シントロンが何度クリーンヒットを奪っても、その強打に耐えてパンチを出し続けるマルガリート。両者必死の我慢比べが続きますが、先に心が折れたのは3年前と同じくシントロンでした。
6ラウンド、マルガリートがシントロンをロープに追い詰め、強烈な左ボディーブロー。前のめりに倒れ、足をバタつかせながら苦痛の表情を浮かべるシントロンに対し、「立ち上がって来い」と両手を上下させるマルガリート。結局、シントロンは10カウントで立ち上がることができず、またしてもマルガリートの前にひれ伏してしまいます。ギリギリの状態で戦っているところに、カウンターの左ボディーがまともに入っては立ち上がれないですね。
この試合のマルガリートは本当に強かったです。スタミナ、打たれ強さ、手数のどれを取っても、マルガリートがシントロンを上回っていたと思います。ウェルター級はミゲール・コットとフロイド・メイウェザーの両チャンピオンが圧倒的な強さを誇っていますが、コットとメイウェザーに初黒星を付けることができる可能性があるとすれば、チャンピオンに返り咲いたマルガリートか、注目のホープ、アンドレ・ベルトでしょう。
一部のボクシングファンから根強い「ウェルター級最強説」を唱えられるマルガリートがチャンピオンに返り咲いたことで、ウェルター級の勢力図が一気に変わる可能性があります。打ち合ったら、ウェルター級でマルガリートに勝てるボクサーはいませんよ。コットもメイウェザーもマットに沈むでしょう。「ティファナの竜巻」はどの進路を進むのか?防衛戦か?統一戦か?ウェルター級の大きなカギを握る存在になりそうですね。
試合結果
試合結果 | アントニオ・マルガリートが6ラウンドTKO勝ちでタイトル奪取。シントロンはマルガリート戦2連敗で王座陥落。 |