IBF世界ライト級タイトルマッチ
チャンピオン | ファン・ディアス(アメリカ) 戦績:33戦全勝17KO |
挑戦者 | ネート・キャンベル(アメリカ) 戦績:37戦31勝25KO5敗1分 |
試合内容
3団体統一世界ライト級チャンピオン、ファン・ディアス。決して体格的に恵まれているボクサーとは言えませんが、圧倒的な手数を武器に数々の強敵を打ち負かしてきた全勝チャンピオンです。特に「ブラジリアン・ボンバー」の異名を誇るアセリノ・フレイタスを8ラウンドTKOで破った統一戦は見事でした。
ディアスのファイトスタイルは日本人ボクサーのファイトスタイルに似ています。ガードを高く上げ、前に出ながら、接近戦の打ち合いで勝機を見出す戦い方で、体格が同じくらいの日本人ボクサーにとって大変参考になるチャンピオンだと思います(ディアスは身長168センチ、リーチ165センチです)。
今回はWBA、IBF、WBOの3つのベルトのうち、IBFのベルトのみをかけた防衛戦です。挑戦者はディアスより一回り体の大きなネート・キャンベル。一撃一撃に力を込めてパンチを放つ、ハードヒッターで、スーパーフェザー級の世界タイトルに挑戦した経験を持つ実力者です。
ディアスが「ベイビー・ブル」のニックネーム通り、突進力と手数を活かしてタイトルを防衛するのか?36歳のベテラン、強打者のキャンペルが巧みな試合運びで全勝チャンピオンをストップするのか?ファイター同士のタイトルマッチは序盤から激しい打ち合いとなりました。
管理人は試合前、接近戦で圧倒的な強さを見せるディアスとの打ち合いを嫌がって、挑戦者のキャンベルがアウトボクシングをするじゃないかと予想していたのですが、試合開始のゴングが鳴ると同時にキャンベルが一気に突進し、足を止めて、ディアスと打ち合います。
一発のパンチ力で上回るキャンベルに対して、ディアスは回転の速い連打で応戦します。ディアスはいつも同じような接近戦で勝機を見出してきたボクサーなので、この手の打ち合いには慣れているはずですが、キャンベルのパンチ力が想像以上なのか、この試合はガードを突き破られ、まともにパンチをもらってしまう場面が目立ちます。
ただ、キャンベルも余裕があるわけではありません。前半勝負とも思えるオーバーペース気味で勝負をかけるのですが、ガードを下げて戦う攻撃重視のスタイルなので、ときどきディアスにクリーンヒットを許してしまいます。キャンベルは決して器用なボクサーではありませんが、ファイティングスピリッツはすさまじいものがあります。
試合の序盤で大きなポイントとなったのは両者のボディー攻撃です。ディアスは接近戦を得意とし、顔面、ボディーにパンチを打ち分けるボクサーです。この試合もキャンベルのボディーに強烈なコンビネーションを叩き込み、キャンベルが嫌がる場面が何度もありました。
今までの対戦相手はここで、ディアスとの接近戦を嫌がって、距離を取って戦おうとしたところに追い討ちをかけられることが多かったのですが、キャンベルはこれまでディアスが戦ったボクサーと違って、接近戦を貫き、打たれたら打ち返す戦い方で一歩も引きません。さらに、お返しとばかり、強烈なボディーブローをディアスに叩き込みます。ディアスにこれほどボディーブローを叩き込んだボクサーはキャンベルが初めてだと思います。
そして、この試合の大きなターニングポイントになったのが6ラウンド。キャンベルのバッティングで、ディアスが左まぶたをカットしてしまったのです。ここから試合のペースは一気にキャンベルへと傾きます。勝負を焦るディアスに対して、キャンベルは一発一発力を込めたコンビネーションを顔面、ボディーへ的確にヒットさせます。ここが勝負と感じたのか、一気に勝負をかけるところはさすがで、カットした顔面だけでなく、ボディーへも上手くパンチを散らすあたりはベテランの味ですね。
ディアスがこれほど打たれた試合は初めてだと思います。ディアスが得意とする接近戦でこれだけ打たれるとは、誰が予想したでしょうか?大苦戦です。序盤のオーバーペースが原因で疲れているキャンベルと、打たれたダメージが原因で疲れているディアスでは「疲れの質」が違います。さらに、体格的に一回り大きなキャンベルが打ち終わりでのしかかるようにクリンチするので、ディアスはますます体力を奪われます。
試合の終盤に入ると、カットした左まぶたが腫れ上がり、ほとんど視界をふさいでしまい、ディアスは左の視界を奪われたまま戦わなければならない状況に陥ってしまいます。10ラウンド、11ラウンドはキャンベルのラッシュをまとも食らい、このまま続行するのは危険なので、試合をストップするべきだと思いましたが、セコンド、レフェリーとも試合続行を指示。その結果、ディアスが何とか踏ん張り、試合の行方は3人のジャッジの判定に委ねられます。
試合前、誰がこの結果を予想したでしょうか?2-1の判定でキャンベルが勝利を収め、IBF世界ライト級タイトルを獲得したのです。キャンベルに失礼ですが、番狂わせと言わざるを得ない結果です(キャンベルファンの皆さん、ごめんなさい)。もちろん、打たれすぎたことがディアスの大きな敗因ですが、6ラウンドに左まぶたをカットしたことが最後まで響きました。後半強いディアスが後半にポイントを奪われては苦しいですね。
この試合はIBFのタイトルのみがかかったタイトルマッチでしたが、チャンピオンのディアスが敗れたことで、ディアスが保持していたWBAとWBOのタイトルが空位となり、試合後、WBAとWBOがキャンベルを新チャンピオンに認定すると発表しました。これにより、キャンベルは3団体統一世界ライト級チャンピオンになったのです。36歳で初戴冠を果たしたキャンベルの見事な執念を観たタイトルマッチでした。個人的にはリターンマッチでもう一度両者の激闘が観たいです。実現すると嬉しいな。
試合結果
試合結果 | ネート・キャンベルが2-1の判定勝ちでタイトル獲得 【公式ジャッジの採点結果】
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