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王座返り咲きなるか?ミッケル・ケスラー対ディミトリー・サルティソン

WBA世界スーパーミドル級王座決定戦

同級1位 ミッケル・ケスラー(デンマーク)
戦績:40戦39勝29KO1敗
同級4位 ディミトリー・サルティソン(カザフスタン)
戦績:20戦全勝12KO

試合内容

今回の試合は、ミッケル・ケスラーにとって、2007年11月、ジョー・カルザゲとの3団体王座統一戦に判定で敗れて以来の再起戦です。再起戦がいきなりの王座決定戦とは、いかにケスラーの評価が高いかわかりますね。

ケスラーと王座を争うのは、全勝を続けるカザフスタン出身のディミトリー・サルティソン。サルティソンの試合を観るのは今回が初めてです。初黒星を喫しても、ボクシング関係者、ボクシングファンから高い評価を得るケスラー相手にどれだけボクシングができるのか?注目の王座統一戦は波乱含みのスタートとなりました。

まず仕掛けたのはケスラー。いつもはガードを高く構えて、序盤は相手の出方を確認するケスラーですが、この試合は自分から積極的にパンチを出します。ただ、全体的にバランスが悪く、上半身は前へ出るのですが、足がついてきません。地元デンマークでの再起戦ということも影響しているのでしょう。冷静でクレバーな戦い方を信条とするケスラーらしくない立ち上がりです。

「なぜ勝負を急いでいるのかな?」と思っていると、今まで静かなボクシングをしていたサルティソンがケスラーの左ジャブに合わせて、カウンターのオーバーハンドライト(肩ごしの右パンチ)。これが見事に顔面をとらえ、一瞬ケスラーの腰が落ちます。「うそ!」と思わず立ち上がってしまいましたが、ケスラーはガードを固めてサルティソンの追撃を許しません。恐るべし、サルティソン。久しぶりにあれほど鮮やかなカウンターのオーバーハンドライトを観ました。

「まさか」と思わせる予想外の1ラウンドでしたが、2ラウンドに入るとケスラーのバランスが少しずつ安定し始めます。1ラウンドはケスラー本来の距離より接近して戦っていましたが、2ラウンド以降は懐の深さを活かした本来の戦いに戻り、左ジャブにカウンターを合わせるサルティソンの攻撃を封じます。試合中に悪い部分をしっかりと修正できる点はケスラーの強みですね。

3ラウンドに入ると、ケスラーが左ジャブ、右ストレートに加えて、右アッパーを使い始めます。ケスラーにリーチで劣るサルティソンは懐で勝負するため、必死に入り込もうとするのですが、「インファイター殺し」の右アッパーが侵入を許しません。そのため、懐に入れないサルティソンはケスラーの左ジャブに右カウンターを合わせるだけの単調な戦い方になってしまいます。

6ラウンド以降は、アッパーに加えて、ボディーブローを使い始めたケスラーが完全に試合の主導権を握ります。サルティソンは顔面、ボディーのどちらもキツイ状態です。11ラウンドには、ケスラーが連打でサルティソンをコーナーへ追い込み、右ストレートでダウンを奪います。

そして、迎えた最終ラウンド。残り1分30秒を切ったあたりで、ケスラーが怒涛の攻撃をみせます。左右のフックの連打でサルティソンをぐらつかせ、バランスを崩して前のめりになったところに、コンパクトで強烈な右アッパー。サルティソンは立ち上がることができず、ケスラーが見事なKOで王座復帰を果たしました。

試合のカギとなったのはケスラーの右アッパー。そして、この右アッパーこそ、管理人が驚いたケスラーの大きな進化です。左ジャブ、右ストレートで十分戦えるケスラーが、なぜ打つ瞬間ガードがガラ空きになるリスクを冒してアッパーを使う必要があるのでしょうか?

ケスラーが得意とする左ジャブ、右ストレートの戦い方は「直球」のボクシング。もちろん、世界を制したケスラーの「直球」は超一流です。しかし、「直球」ばかりだと、いくら超一流とはいえ、相手は次に何が来るかを予想しやすいですよね。圧倒的な力の差があれば、「直球」だけでも十分勝てますが、同じような力を持つ相手と勝負すると、「直球」だけでは苦しくなります。

ケスラーが初黒星を喫したジョー・カルザゲは老獪なボクシングで、ケスラーを封じましたが、管理人はカルザゲとケスラーにそれほど大きな力の差があるとは思いません。むしろ、パンチ力、ディフェンス力だけを考えると、ケスラーのほうが上でしょう。しかし、ケスラーはカルザゲに勝てませんでした。ケスラーと同じことがジェフ・レイシーにも言えます。破壊力抜群の左フックを武器に全勝を続けていたレイシーも、カルザゲに完敗を喫してしまいました。

カルザゲが持っていて、ケスラーとレイシーが持っていないものは何でしょうか?それは「ボクシングの幅」です。カルザゲが、パワーで上回るケスラーとレイシーをシャットアウトできたのは、幅広いボクシングを展開できる技術、判断力、洞察力を練習や試合を通して身に付けたからです。今やカルザゲが持つ「ボクシングの幅」は全階級ナンバーワンの広さだと言っても過言ではないでしょう。

ケスラーはカルザゲとの王座統一戦で敗れはしましたが、敗戦の中から「大きな教訓」を手に入れたと思います。再起戦でこれほど大きな進化をみせてくれるボクサーはあまりいないので、ケスラーの戦い方に感心しました。ケスラーに「ボクシングの幅」が加われば、「鬼に金棒」です。今後のさらなる進化に期待大ですね。

試合結果

試合結果 ミッケル・ケスラーが12ラウンドKO勝ちでタイトル奪取。ジョー・カルザゲとの王座統一戦で失ったタイトルの奪還に成功。
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