IBF世界スーパーライト級タイトルマッチ
チャンピオン | ポール・マリナッジ(アメリカ) 戦績:24戦23勝5KO1敗 |
挑戦者 | ハーマン・ヌゴージョ(カナダ・カメルーン出身) 戦績:17戦16勝9KO1敗 |
ポール・マリナッジ対ハーマン・ヌゴージョの試合内容
スーパーライト級の世界チャンピオンで最もKO率が低いのが、IBFチャンピオンのポール・マリナッジ。24戦(23勝)してわずか5KO、KO率は20%ちょっとしかありませんが、軽快なステップワークとハンドスピードのあるパンチを武器に相手を翻弄するボクシングは玄人好みで、東海岸を中心に結構人気があるボクサーです。
アメリカの東海岸は、西海岸やラスベガスと違って、パンチ力がなくても、手数が多くスピードがある好戦的なボクサー、特にトリッキーなボクサーは強打者でなくても人気がある地域なんです。
「マジックマン」のニックネームを誇るマリナッジの対戦相手は「ブラックパンサー」のニックネームを持つハーマン・ヌゴージョ。ランキング1位のタフで強打の挑戦者、ヌゴージョを迎えたマリナッジの初防衛戦は両者にとって苦しい展開となりました。
序盤はチャンピオン、マリナッジのスピードが挑戦者、ヌゴージョの突進力を上回り、左ジャブを中心としてコンビネーションブローを的確に当てながらポイントを積み重ねます。
しかし、3ラウンドに入ると、マリナッジのスピードに少しずつ慣れてきたヌゴージョがガードの上から打たせながらも強引に前で出続けて、右ストレートや右フックを当て始めます。特にマリナッジの生命線とも言える左ジャブに合わせてヌゴージョが右ストレートを放つ作戦はとても有効だったようです。
「左ジャブを出すと、右ストレートのカウンターを食らうのではないか?」という不安がマリナッジを襲い、左ジャブの手数が急に減ってしまいます。そして、試合の主導権はリズムを失ったマリナッジからヌゴージョへ。
ヌゴージョは持ち前の体力を活かし、前へ出続けて強引にパンチを集めます。中盤は、体格、体力で不利なチャンピオンがロープを背負う場面が目立ち始め、7ラウンドには今までスピードでかわしていたパンチをまともにもらってしまいます。
ただ、ヌゴージョも的中率が悪く、決定的なダメージを与えることができません。しかも、力いっぱい強引にパンチを振り回すので、体力を相当消耗しています。8ラウンド以降は、疲れが影響してか、お互いに手が出なくなります。7ラウンドに猛攻を仕掛けたヌゴージョにとって、大変もどかしい展開。前に出て、パンチを集めたくても、体が言うことを聞きません。
試合の後半は、両者ともキレがない中、技術で上回るマリナッジが小さなパンチを的確に当てながら戦い、ポイントを奪い返す展開が続きます。そして、結果は12ラウンド判定勝ちでマリナッジが初防衛に成功。前半はスリリングな展開でしたが、両者がスタミナを失った8ラウンド以降はごまかし合う展開になってしまい、少し消化不良の試合でした。
挑戦者のヌゴージョは作戦ミスで勝てる試合を落としてしまった感じです。もう少し体力をセーブして後半勝負に持ち込めれば、新チャンピオンとしてリングアナ、ジミー・レノン・ジュニアの勝ち名乗りを受けていたかもしれません(もし両者が再戦したら、今度はヌゴージョが勝ちそうな気がします)。
一方、チャンピオン、マリナッジは、初防衛戦の緊張やヌゴージョとの相性もあったと思いますが、正直な感想として、かなり苦しい試合でした。特に、ヌゴージョのように体力で上回る挑戦者と戦う場合、どう戦うのか、今後の大きな課題が見えた気がします。
ただ、苦戦しながらもタイトルを防衛したのは見事ですし、この苦しい経験を活かしてステップアップするチャンピオンはたくさんいるので、次の防衛戦に期待したいですね。
ポール・マリナッジ対ハーマン・ヌゴージョの試合結果
試合結果 | チャンピオン、ポール・マリナッジが判定勝ちで初防衛に成功。ちなみに、管理人の採点は115-113でマリナッジでした。 【公式ジャッジの採点結果】
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