WBC世界ヘビー級タイトルマッチ
チャンピオン | サミュエル・ピーター(アメリカ) 戦績:31戦30勝23KO1敗 |
挑戦者 | ビタリ・クリチコ(ウクライナ) 戦績:37戦35勝34KO2敗 |
試合内容
4年ぶりの復帰戦がいきなりの世界ヘビー級タイトルマッチ。長期のブランクを作ったボクサーが復帰し、再び世界チャンピオンに返り咲くことが困難なボクシングの世界で、復帰戦でいきなり世界タイトルマッチに挑戦するのは、どう考えても無謀な感じがしますが、「ビタリ・クリチコなら、この常識を打ち破れるかも」という期待が高まります。
ビタリ・クリチコはIBF・WBO世界ヘビー級チャンピオン、ウラディミール・クリチコの実兄で、かつてWBCとWBOのヘビー級タイトルを獲得したスーパーチャンピオンです。2004年12月にケガのため、世界チャンピオンのまま引退したのですが、ケガで引退したビタリ・クリチコに対して、WBCは「WBC世界ヘビー級名誉チャンピオン」の称号を与え、もしビタリ・クリチコが復帰する場合は優先的に世界タイトルへ挑戦する権利を与えました。そして、2008年10月、世界中のボクシングファンの期待を背負い、4年ぶりにリングへ戻ってきたのです。
ビタリ・クリチコが挑戦するのは、WBC世界ヘビー級チャンピオンのサミュエル・ピーター。現役の世界ヘビー級ボクサーではトップクラスの突進力とパンチ力を持つ攻撃型ボクサーで、ウラディミール・クリチコ、WBA世界ヘビー級チャンピオンのニコライ・ワルーエフと共にヘビー級戦線を引っ張っている強打者です。もしビタリ・クリチコが勝てば、ボクシング史上初めて、同時期に兄弟ボクサーが世界ヘビー級チャンピオンに君臨する快挙を達成することになります。ビタリ・クリチコがリングから離れていた「空白の4年間」で著しい成長を遂げたピーターは、ビタリ・クリチコの野望を打ち砕くことができるのか?世界中のボクシングファンが注目する大一番は衝撃の結末となりました。
序盤から試合のペースを握ったのはビタリ・クリチコ。左ジャブから右ストレート、右フックを打ち下ろす全盛期のボクシングスタイルで、チャンピオンのピーターを全く寄せ付けません。ヘビー級で一番突進力があるピーターが懐へ飛び込めないだけでなく、前へ進むことすらできないんです。この瞬間、「空白の4年間」は全く意味をなさなくなってしまいました。「空白の4年間」で世界ヘビー級チャンピオンに登りつめたピーターがビタリ・クリチコの前では全く歯が立たないんです。
一方的に打たれ続けるピーターに対して、ビタリ・クリチコは自分のパンチだけが届く距離で体力を温存しながら磐石の戦い。以前、ピーターはビタリ・クリチコの弟、ウラディミール・クリチコと戦ったことがあります。3度のダウンを奪いながら、判定で敗れたのですが、「左ジャブとスタミナ配分を覚えてもう一度戦えば、今度はピーターが勝つな」と思う内容でした。しかし、同じクリチコでもビタリとなると話は別のようです。ピーターはビタリ・クリチコと何度戦っても勝てないでしょう。それほど両者には力と経験の差があると思います。
試合は終始ビタリ・クリチコのペースで進み、8ラウンド終了時にピーターが試合を放棄。ビタリ・クリチコがTKO勝ちで世界タイトルを獲得し、弟のウラディミール・クリチコと共にボクシング史上初めて、同じ時期に兄弟で世界ヘビー級チャンピオンになるという快挙を達成しました。ビタリ・クリチコにとって4年ぶりの実践でしたが、ピーターが何もできないほど圧倒的な勝利でしたね。
KO勝ちを狙って1、2ラウンド少し飛ばしすぎたせいか、3ラウンド急激に失速する場面がありましたが、そこからペース配分を考えて、試合中に戦い方を修正できる点はビタリ・クリチコの素晴らしさですね。久しぶりの実践でスタミナ不足を少し露呈したビタリ・クリチコですが、今後は問題なくコンディションを整えてくると思います。スーパーチャンピオンが帰ってきましたね。
「ボス」が4年ぶりに戻ってきたヘビー級戦線。ビタリ・クリチコの戴冠によって、主要4団体のうち、3本のベルトはクリチコ兄弟のものになりました。今後は残り1本のベルトを持つWBAチャンピオンのワルーエフがクリチコ兄弟のターゲットになります。兄弟で主要4団体のベルトを統一する日は来るのでしょうか?「ボス」の復帰でヘビー級戦線は大きく動き出そうとしています。
試合結果
試合結果 | ビタリ・クリチコが8ラウンド終了TKO勝ちで世界ヘビー級タイトルを獲得。ボクシング史上初めて、兄弟ボクサーが同時期に世界ヘビー級チャンピオンに君臨するという快挙を達成。 |