WBA世界ミドル級タイトルマッチ
チャンピオン | フェリックス・シュトルム(ドイツ) 戦績:31戦28勝12KO2敗1分 |
挑戦者 | ジェイミー・ピットマン(オーストラリア) 戦績:16戦全勝7KO |
試合内容
WBA世界ミドル級チャンピオンのフェリックス・シュトルムはドイツを主戦場にしている攻防兼備のボクサーです。オスカー・デラホーヤ、ハビエル・カルティリャホに敗れて2度タイトルを失っていますが、その後2度の復権を果たし、合計3度ミドル級の世界タイトルを獲得しています(WBAが2度、WBOが1度)。人気、実力ともミドル級最強と言われるWBC・WBO世界ミドル級チャンピオン、ケリー・パブリックが「ミドル級4団体のタイトルを統一したい」と宣言したことで、シュトルムが防衛を続ければ、自然とビッグマッチが組まれるでしょう。そのためにも、今回の防衛戦は「内容を伴う勝利」を収めたいところです。
今回の挑戦者、ジェイミー・ピットマンはオーストリア出身のタイトルコレクター。これまでに、PABAミドル級タイトル、WBOアジア・パシフィック・ミドル級タイトル、WBAパン・アフリカン・ミドル級タイトルといった地域タイトルを獲得し、初の世界戦でタイトル奪取を狙います。チャンピオン、シュトルムは、全戦全勝を続けるピットマンの勢いを止めることができるのか?試合は序盤から両者が積極的に打ち合う展開となりました。
まず主導権を握ったのは、チャンピオンのシュトルム。いつもなら序盤はガッチリとガードを固めて相手の様子を見るシュトルムですが、この試合は自分から積極的にパンチを繰り出します。特に有効なのが、右アッパー。おそらく、ピットマン陣営はこの右アッパーを予想していなかったと思います。アッパーは相手を一撃でKOできるパンチですが、打つ瞬間はシュトルムの右サイドがガラ空きとなり、サウスポー、ピットマンの左ストレートをまともに受けてしまう可能性がある危険なパンチだからです。管理人も今まであまりシュトルムのアッパーを観たことがなかったので、少し驚きました。
もちろん、ピットマンも黙っていません。力を込めて放つワンツーは迫力満点。シュトルムはブロックが強固なボクサーなので、ピットマンの左ストレートをほぼ完璧にブロックしていましたが、並みのブロックなら、壊されてしまうほどの威力です。「荒削りだけど、力強いボクサー」というのが、ピットマンの率直な感想ですね。シュトルムもピットマンも同じようにガードをしっかり固めて相手の攻撃を防ぎ、打ち終わりを狙って反撃するタイプですが、この試合は両者のガードの固さと幅が勝負の分かれ目になったと思います。
試合の中盤に入ると、チャンピオンのシュトルムが上下にコンビネーションを打ち分け始め、左ボディーブローがピットマンの肝臓をクリーンヒットするシーンが目立つようになります。何とか耐えるピットマンですが、5ラウンドと6ラウンドにボディーでダウンを奪われ、試合のペースは完全にシュトルムへと傾きます。そして、迎えた7ラウンド。シュトルムがピットマンをロープに追い詰め、右アッパー、左ジャブでダウンを奪ったところで、勝負あり。レフェリーストップで、シュトルムが完璧な内容で3度目の防衛に成功しました。
WBC・WBOチャンピオンのケリー・パブリック、IBFチャンピオンのアルツール・アブラハムに比べて、地味な印象が強いシュトルムですが、この試合のシュトルムは、いつになく攻撃的でしたね。3人のチャンピオンの中で攻撃力や体格的なアドバンテージは一番ないかもしれませんが、ボクシング技術や戦術眼は一番長けていると思います。この調子でタイトル防衛を続ければ、今年の終わりか、来年にはパブリック、アブラハムとの統一戦が実現するでしょう。ただ、パブリックとアブラハムの攻撃力はパンパじゃないので、相手のパンチをすべてブロックで防ぐのではなく、空振りさせるディフェンスをしないと厳しいかなと思います。どの統一戦が最初に実現するのか?楽しみですね。
試合結果
試合結果 | フェリックス・シュトルムが7ラウンドTKO勝ちで3度目の防衛に成功。アメリカ再進出へ弾みをつける防衛戦となりました。 |