IBF世界ミドル級タイトルマッチ

試合内容

アルメニア出身の「KOキング」、アルツール・アブラハム。2005年12月に、空位のIBF世界ミドル級タイトルを獲得して以来、7度の防衛に成功し、今回が8度目の防衛戦となります。「攻める時は攻める、守る時は守る」という攻防分離のボクシングを貫くハードパンチャーです。決して器用なボクサーではありませんが、ストレート、フック、アッパー、どのパンチも相手を一発でKOできる威力を秘めています。

全勝チャンピオンのアルツール・アブラハムに挑戦するのは、元IBF世界スーパーウェルター級チャンピオンのラウル・マルケス。1992年のバルセロナオリンピックに出場したテクニシャンのサウスポーで、相手の長所を消してしまう上手さを持っています。アルツール・アブラハムの攻撃を空回りさせることができれば、おもしろい展開になりそうです。

群雄割拠のミドル級戦線で頂点を極めようとするアルツール・アブラハムが8度目の防衛に成功するのか？ベテランのサウスポー、ラウル・マルケスが全勝チャンピオンに初黒星を付けて、2階級制覇を達成するのか？試合は静かな立ち上がりとなりました。

序盤はお互いにガードを高く構えて様子を見る展開。アルツール・アブラハムは完全なスロースターターなので、予想通りの立ち上がりですね。ラウル・マルケスがサウスポーなので、いつも以上に相手のパンチの出所を探っている感じです。

試合が動いたのは3ラウンド。「ラウル・マルケスの戦力はわかったよ」とばかりに、チャンピオンのアルツール・アブラハムがプレッシャーをかけ始めます。しかし、サウスポーのラウル・マルケスが予想以上に上手く戦っていて、半身構え、さらにスタンスを極端に広く取っているので、チャンピオンの強打がなかなか届きません。

「これは捕まえるのに時間がかかるかも」と思ったのですが、4ラウンドに入ると、アルツール・アブラハムが本領を発揮。「顔面は遠い」と見るや、すかさずボディーブローを織り交ぜた攻撃に切り替え、顔面、ボディーへパンチを散らします。「上手いなあ」と感心する管理人。アルツール・アブラハムが振り回すだけのボクサーなら、ラウル・マルケスも戦いやすいのでしょうが、「相手を仕留める術」を知っているんですよね。

6ラウンドに入ると、手数を一気に増やして、試合の主導権を握るチャンピオン。これまでアルツール・アブラハムの強打をブロックしていたラウル・マルケスですが、ラウンドが進むにつれて、パンチの破壊力、プレッシャーに耐えきれなくなっているようです。6ラウンド終了のゴングが鳴り、意気揚揚とコーナーへ戻るチャンピオンとは対照的に、うつむき加減のラウル・マルケス。

「このまま真正面からプレッシャーを受け続けると、マルケスは苦しいなあ。何かいい作戦はないかな？」と考えていると、突然ラウル・マルケスのセコンドがレフェリーに試合放棄を伝えます。その瞬間、両手を挙げて不満の表情を浮かべるアルツール・アブラハム。管理人も「え？ここでストップ？」と思いましたが、ラウル・マルケスが勝てそうな雰囲気は全くないので、しょうがないですね。

アルツール・アブラハムからすれば、「集まってくれたお客さんに派手なKOシーンをプレゼントしたかったのに、なんで試合放棄するんだよ。せっかく盛り上がってきたのになあ」という感じでしょうか。いずれにしても、6ラウンドに浴びせたチャンピオンの強打が挑戦者から戦意を奪ったようです。

この勝利で、アルツール・アブラハムは8度目の防衛に成功しました。「アブラハムに勝つならサウスポーか、スピードスターかな？」と思っている管理人ですが、この試合を観る限り、アルツール・アブラハムに勝てる挑戦者（世界ランカー）はいない気がします。もしかすると、対等に戦える挑戦者すらいないかもしれません。

こうなると、いよいよ統一戦が現実味を帯びてきそうですね。アルツール・アブラハムの戦力を考えると、WBA世界ミドル級チャンピオンのフェリックス・シュトルムが相手なら、アルツール・アブラハムが圧倒的に有利、WBC・WBO世界ミドル級チャンピオンのケリー・パブリックが相手なら、アルツール・アブラハムが不利だと予想します。2009年は3人のミドル級チャンピオンが拳を交える可能性大です。最強は誰かな？

試合結果