IBF世界バンタム級タイトルマッチ
チャンピオン | ジョセフ・アグベコ(ガーナ) 戦績:27戦26勝22KO1敗 |
挑戦者 | ビック・ダルチニャン(アルメニア) 戦績:34戦32勝26KO1敗1分 |
試合内容
3団体統一世界スーパーフライ級チャンピオンのビック・ダルチニャンが3階級制覇をかけて、IBF世界バンタム級チャンピオンのジョセフ・アグベコに挑みます。前日計量の体重と比べて、ジョセフ・アグベコは約2キロ、ビック・ダルチニャンは約5キロも増量しているそうです。どちらも踏み込みが速く、高いKO率を誇るハードパンチャー。パンチ力だけでなく、出入りのスピードにも注目ですね。
試合はお互いが積極的にパンチを打ち込むスリリングな立ち上がり。スーパーフライ級では、ビック・ダルチニャンが攻めると、迫力におされて相手が下がったのですが、ジョセフ・アグベコは下がらずパンチを出して応戦しています。ビック・ダルチニャン相手に初回からこれだけパンチを打ち込んでいるボクサーは、ビック・ダルチニャンが唯一の黒星を喫したノニト・ドネア以来ではないでしょうか?
2ラウンドに入ると、踏み込んで得意の左ストレートを打ち込むビック・ダルチニャンに対して、ジョセフ・アグベコが右ストレートのカウンターを狙うボクシングで応戦します。「ダルチニャンはノーガードだけど、アグベコはガードを高く構えているなあ。ダルチニャンの強打がアグベコのガードを打ち破るのが先か、アグベコのカウンターがダルチニャンをとらえるのが先か、おもしろい展開になりそうだよ」とテンションが上がりまくる管理人。お互いに一発狙いのボクシングなので、手数は少ないですが、すごい迫力です。一瞬で試合が終わりそうな緊迫感がビシバシ伝わってきますね。
試合序盤はビック・ダルチニャンが前へ出続けてパンチを打ち込む展開が続き、変則的なボクシングでジョセフ・アグベコをかく乱する場面が目立ちましたが、6ラウンドに入ると、ビック・ダルチニャンのスタミナが切れ始め、少しずつ動きが鈍ってきます。一方のジョセフ・アグベコはビック・ダルチニャンのスピードに慣れてきたのか、コンパクトな右ストレートのカウンターでビック・ダルチニャンからクリーンヒットを奪います。
「ありゃ?試合の流れが変わるかも」と思い始めた7ラウンド。開始直後からジョセフ・アグベコが積極的に前へ出てパンチを打ち込みます。勝負をかけてきましたね。ジョセフ・アグベコはノーガードで飛び込んでくるビック・ダルチニャンと違って、小刻みに上半身を振って前へ出てくるので、ビック・ダルチニャンは的を絞ることができず、自慢の強打が空を切る場面が目立ち始めます。
「ダルチニャンは口が開きっぱなしだよ。相当苦しんじゃない?アグベコはビッグチャンスだよ」と予想外の展開に驚きながら試合を観戦していると、ラウンド終了間際、踏み込んだビック・ダルチニャンとジョセフ・アグベコが交錯し、ジョセフ・アグベコがリングに膝をつきます。「あ、スリップダウンだ」と思ったのですが、レフェリーの判断はパンチによるダウン。ジョセフ・アグベコにとってはかなり不本意なダウンですね。
「アグベコ、かわいそうだよ」と思わず同情してしまう管理人。しかも、珍しいことに、7ラウンドはタイムキーパーが時間を計り間違えて、3分のところを4分くらい戦っていました。本来ならダウンを奪ったビック・ダルチニャンに有利なアクシデントだと思うのですが、スタミナを切らしているビック・ダルチニャンのほうが、ダウンを奪われたジョセフ・アグベコより辛かったかもしれませんね。実に不思議なラウンドです。
7ラウンドにダウンを奪ったビック・ダルチニャンですが、8ラウンド以降は目に見えてスタミナが切れ、ジョセフ・アグベコのパンチをまともに受ける場面が増えます。完全にジョセフ・アグベコのペースになってきました。ジョセフ・アグベコは一発狙いのビック・ダルチニャンのパンチをかわして、コンパクトなパンチで確実にポイントを奪取。ビック・ダルチニャンの突進に下がることなく、的確にパンチを当てる技術はさすがですね。
試合終盤はジョセフ・アグベコが動きの鈍ったビック・ダルチニャンを圧倒し、完全にペースを握りますが、決定的なパンチを打ち込むことはできず、12ラウンド終了のゴング。試合の行方は3人のジャッジに委ねられ、後半盛り返したジョセフ・アグベコが3-0の判定勝ちでビック・ダルチニャンの3階級制覇の夢を打ち砕きました。
立ち上がりを観る限り、「ダルチニャンが3階級制覇に成功するかな?」と思ったのですが、6ラウンド以降は急激に動きが鈍り、試合の流れが一気にジョセフ・アグベコに傾きましたね。フライ級、スーパーフライ級では突進力で押し切ってきたビック・ダルチニャンですが、ジョセフ・アグベコを最後まで後退させることはできず、逆に押し切られる形になってしまいました。
ただ、ビック・ダルチニャンにとって勝てない試合ではなかったと思います。試合前の5キロの増量が少なからず体のキレ、スタミナに悪影響を与え、本来の迫力あるボクシングが序盤で姿を消してしまったことは残念ですが、ビック・ダルチニャンの攻撃力があれば、今後バンタム級で戦い、3階級制覇を達成する可能性はかなり高い気がします。
世界的な人気を誇るビック・ダルチニャンを破ったジョセフ・アグベコは、この勝利で一躍知名度を上げました。ビック・ダルチニャン相手に本当に勇敢なボクシングで、肩口から真っ直ぐ伸びる右ストレートのカウンターはお手本のようです。個人的には、ジョセフ・アグベコに唯一の黒星を付けたウラディミール・シドレンコとの再戦が観たいですね(ウラディミール・シドレンコ戦は2-1の判定負け)。ビック・ダルチニャンとの再戦も魅力的です。
試合結果
試合結果 | ジョセフ・アグベコが12ラウンド判定勝ちで3度目の防衛に成功。管理人の採点は114-113でジョセフ・アグベコの勝ちでした。 【公式ジャッジの採点結果】
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