WBA・IBF・WBO世界ヘビー級王座統一戦
IBF・WBOチャンピオン | ウラディミール・クリチコ(ウクライナ) 戦績:58戦55勝49KO3敗 |
WBAチャンピオン | デビッド・ヘイ(イギリス) 戦績:26戦25勝23KO1敗 |
ウラディミール・クリチコ対デビッド・ヘイの試合内容
ついに実現しました!IBF・WBO世界ヘビー級チャンピオンのウラディミール・クリチコとWBA世界ヘビー級チャンピオンのデビッド・ヘイが「ボクシング界最強」の称号をかけて激突します。世界中のボクシングファンが待ちに待ったヘビー級チャンピオン対決ですね。
13連勝中のウラディミール・クリチコは今回の王座統一戦がIBFタイトル10度目、WBOタイトル6度目の防衛戦になります。一方、15連勝中のデビッド・ヘイはWBAタイトル3度目の防衛戦です。連勝記録と防衛記録を見るだけでも、ウラディミール・クリチコとデビッド・ヘイがどれほど優れたボクサーであるか、一目瞭然ですね。
久しぶりのヘビー級頂上決戦を前に、ボクシングファンの予想は真っ二つに割れています。ひとつは体格とパワーで上回るウラディミール・クリチコがデビッド・ヘイを寄せ付けず圧倒するという意見。もうひとつはスピードで上回るデビッド・ヘイがウラディミール・クリチコを混乱に陥れるという意見です。
試合前から舌戦を繰り広げてきた両者。拳を武器にリングの上で「最強」を証明するボクサーは2本のベルトを持つウラディミール・クリチコでしょうか?それとも、2階級制覇の実績を誇るデビッド・ヘイでしょうか?3本のベルトをかけた運命のゴングが鳴り響きます。
試合は、ウラディミール・クリチコが開始直後からデビッド・ヘイにプレッシャーをかけて距離を詰め、得意のワンツーを狙う予想外の展開で始まります。ウラディミール・クリチコはプレッシャーをかけてデビッド・ヘイを下がらせることで、デビッド・ヘイのスピードを活かしたボクシングを封じる作戦のようです。
「クリチコが予想外の作戦に出てきたよ。1ラウンドからこれだけ積極的なクリチコは久しぶりじゃない?ヘイはプレッシャーを思い切り感じてるみたい。クリチコの大砲を目の前にどうやって反撃するかな?」と試合の行方を見守る管理人。ウラディミール・クリチコが大事に、そして大胆に戦っていますね。
「このままクリチコのペースになるかな?」と思い始めた3ラウンド50秒。デビッド・ヘイがこの試合初めてウラディミール・クリチコの懐に飛び込み、右ストレートをウラディミール・クリチコのテンプルへ叩き込みます。
「少し浅かったかな?もう半歩踏み込めてたら、クリチコが倒れていたかも。めちゃめちゃ惜しいパンチだよ」と改めてデビッド・ヘイのスピードに脱帽する管理人。デビッド・ヘイがパンチを叩き込んだ後、ウラディミール・クリチコがすぐにクリンチで追撃を避けましたが、デビッド・ヘイの魅力が凝縮された一撃ですね。
4ラウンドに入ると、ウラディミール・クリチコが再び強烈なプレッシャーをかけてデビッド・ヘイをロープへ追い詰め、左ジャブ、左フックで距離を測りながら長距離から得意の右ストレートを狙います。デビッド・ヘイも飛び込んで右ストレートを狙いますが、警戒心を強めたウラディミール・クリチコが徹底的に距離を取り、デビッド・ヘイのパンチが届かないポジションをキープしています。
5ラウンド残り1分には、ウラディミール・クリチコがデビッド・ヘイにプレッシャーをかけ、これまでのワンツーより一段ギアを上げた(ワンとツーの間隔が短い)ワンツーを叩き込みます。上体が柔らかく、反射神経抜群のデビッド・ヘイは何とか直撃を避けましたが、並のボクサーなら、まともに被弾してもおかしくないコンビネーションでしたね。
7ラウンド序盤には、ウラディミール・クリチコの左フックに合わせて、デビッド・ヘイがインサイドから鋭い右フックのカウンターを叩き込みます。一瞬、ウラディミール・クリチコの体が流れますが、ウラディミール・クリチコがデビッド・ヘイの上に覆い被さり、追撃を回避。ウラディミール・クリチコは覆い被さったことで減点1を取られてしましたが、デビッド・ヘイの反撃のチャンスを摘み取りました。
「チャンスだったんだけど、潰されちゃったな。ヘイはなかなかリズムに乗れないよ」と息詰まる展開を見守る管理人。デビッド・ヘイは真っ向勝負を挑んでクリチコ兄弟(ウラディミール・クリチコとビタリ・クリチコ)に勝てる可能性を持つ唯一のボクサーだと思うのですが、想像以上のプレッシャーと距離感にリズムを作ることができません。
その後もウラディミール・クリチコがデビッド・ヘイにプレッシャーをかけ続ける展開が続き、10ラウンド終了間際には、ウラディミール・クリチコの右ストレートがデビッド・ヘイのテンプルにクリーンヒット!デビッド・ヘイは何とか耐えましたが、試合終盤を迎え、さすがにスピードが鈍ってきたようです。
11ラウンド序盤には、ウラディミール・クリチコの巻き込み気味の左フックでデビッド・ヘイがバランスを崩してダウンします。パンチの効果によるダウンではありませんでしたが、レフェリーはパンチによるダウンと判断。デビッド・ヘイにとっては不運なダウンで2ポイントを失ってしまいます。
最終ラウンドはどちらもKOを狙い、右ストレートを打ち込みますが、相手を倒すことはできず、試合終了のゴングが鳴り響きます。勝敗は3人のジャッジに委ねられ、結果は3人のジャッジすべてがウラディミール・クリチコを支持。ウラディミール・クリチコがデビッド・ヘイに12ラウンド判定勝ちを収め、3本の世界ヘビー級チャンピオンベルトを手にしました。
一撃で終わってしまう緊張感がリングを包み、思わず手に汗握ってしまうヘビー級王座統一戦でしたね。世界中のボクシングファンが待ちに待った試合は、ウラディミール・クリチコの前に出続けることでデビッド・ヘイのスピードを封じる作戦が見事に的中した内容でした。
クルーザー級で3団体の王座を統一し、ヘビー級でも革命を起こし続けたデビッド・ヘイですが、ウラディミール・クリチコの壁は予想以上に高く、厚いものでしたね。パンチのスピードは随所に披露しましたが、フットワークのスピードは完全に封じ込められちゃいました。久しぶりにパワーがスピードを封じ込めた試合だったと思います。
この結果、ヘビー級主要4団体の世界チャンピオンベルトはすべてクリチコ兄弟の手に渡りました。「とてつもなく偉大な記録の誕生を目撃しちゃったよ。とんでもない兄弟だな」と唖然としているボクシングファンは管理人だけではないでしょう。
スピードとパワー、そして負けん気の強さを兼ね備えたデビッド・ヘイだからこそ、ウラディミール・クリチコのプレッシャーを感じながらも、勇気を振り絞って懐へ飛び込み、「あああ、惜しい!」というシーンを作り出すことができたと思います。
しかし、ヘビー級に革命を起こしてきた「最後の希望」デビッド・ヘイですら、ウラディミール・クリチコの前では試合の主導権を握られ、満足な戦いができませんでした。「革命戦士」を待っていた運命は大差の判定負けだったのです。
10年前はウラディミール・クリチコが負ける姿を思い描くことができました。でも、今は想像できません。防衛を重ねながら「強いけど、モロいボクサー」から「強くてスキがないチャンピオン」に変貌を遂げたウラディミール・クリチコ。ボクシングファンが想像する以上にリングを制圧している覇者なのかもしれません。
ウラディミール・クリチコ対デビッド・ヘイの試合結果
試合結果 | ウラディミール・クリチコが12ラウンド3-0の判定勝ちでヘビー級3団体の王座統一に成功。 【公式ジャッジの採点結果】
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