WBC世界ヘビー級タイトルマッチ
チャンピオン | ビタリ・クリチコ(ウクライナ) 戦績:45戦43勝40KO2敗 |
挑戦者 | ディレック・チゾラ(イギリス・ジンバブエ出身) 戦績:17戦15勝9KO2敗 |
ビタリ・クリチコ対ディレック・チゾラの試合内容
挑戦者を寄せつけない強さで防衛を重ねるWBC世界ヘビー級チャンピオンのビタリ・クリチコが初の世界タイトル挑戦に燃えるディレック・チゾラを第二の故郷ドイツに迎えて8度目の防衛戦を行います。KO決着が期待できる楽しみな強打者対決ですね!
「ヘビー級のボス」として圧倒的な強さを誇るビタリ・クリチコは、ヘビー級を席巻するクリチコ兄弟の兄で、弟のウラディミール・クリチコと2人でヘビー級主要4団体の世界チャンピオンベルトを総なめにしている「最強の兄弟ボクサー」です(ビタリ・クリチコがWBC、ウラディミール・クリチコがWBAスーパー、IBF、WBOチャンピオン。WBAレギュラーチャンピオンはアレクサンドル・ポベトキン)。
「ヘビー級のボス」に挑む挑戦者はランキング14位のディレック・チゾラ。強打と鋭い踏み込み、そして驚異的なタフネスを武器に戦うイギリス期待のヘビー級ファイター。前日の計量でビタリ・クリチコに張り手を叩き込んだ問題児は、初の世界戦に臆することなく、顔をバンダナで覆って入場し、リング上で口に含んだ水を弟のウラディミール・クリチコに吹きかけるなどやりたい放題です。
「チゾラは度胸があると言うか、けしからんと言うか、スポーツマンシップを無視した道を突き進んでいる問題児だな」と久しぶりに登場した悪役ボクサーに興味津々の管理人。会場に詰めかけた1万2千人の大観衆がチャンピオンのビタリ・クリチコに大声援、ディレック・チゾラに大ブーイングを送る異様な雰囲気に包まれながら、ヘビー級強打者対決のゴングが鳴り響きます。
試合は、左ジャブで距離を取りながら得意の右ストレートを狙うチャンピオンのビタリ・クリチコに対して、挑戦者のディレック・チゾラが体を振りながら真っ向から飛び込んで左右のフックをフルスイングする展開で始まります。
「おおお!チゾラが立ち上がりから倒しに行ってるよ。ビタリ相手に真っ向から飛び込む勇気と打たれ強さはすごいな」とディレック・チゾラのボクシングに注目する管理人。ヘビー級屈指の強打を誇るビタリ・クリチコのパンチに耐えながら前進して、ビタリ・クリチコを後退させていますね。
ディレック・チゾラのプレッシャーを感じて、珍しく下がりながら戦っているビタリ・クリチコですが、要所要所で得意の右ストレートをディレック・チゾラの顔面にクリーンヒットさせます。並のボクサーなら、倒れてもおかしくないパンチが入っていますね。
【Photo:The Ring Magazine】
「パンチを出し続けて乱打戦を避けようとするビタリ。強打に耐えながら接近戦で勝機を見出したいチゾラ。壮絶な我慢比べになりそうだぞ」とワクワクしながら試合を観戦する管理人。5ラウンドを終えてコーナーで休むビタリ・クリチコとディレック・チゾラを確認すると、どちらも肩で呼吸をしています。まだ前半戦ですが、相当苦しそうな表情ですね。
どちらも相手に主導権を握らせまいと序盤からパワーとスタミナを使って勝負するスリリングな展開が続き、試合は後半戦に突入します。7ラウンドに入ると、ディレック・チゾラがさらにプレッシャーを強め、ビタリ・クリチコを後退させるシーンが増えます。これだけ後ろに下がるビタリ・クリチコの試合は久しぶりですね。これまでビタリ・クリチコが倒してきた挑戦者と全く違う試合内容です。
「チゾラはもう少しコンパクトなパンチを集めたいな。フルスイングの空振りが続くと、スタミナを消耗するだけじゃなく、ポイントも失っちゃうんで、まずはパンチを当てて、ビタリに休む時間を与えないボクシングでプレッシャーをかけ続けたいよ」と善戦するディレック・チゾラのボクシングに注目する管理人。
ディレック・チゾラはビタリ・クリチコの強打に耐えて懐に飛び込み、ビタリ・クリチコを下がらせることで「ビタリ・クリチコに踏み込んで体重を乗せたパンチを打たせないこと」「もしパンチをもらっても、ビタリ・クリチコの腕が伸び切る前に被弾するので、威力を軽減させていること」に成功していると思います。
また、ビタリ・クリチコにパンチをもらった後、ディレック・チゾラは必ずパンチを打ち返して追撃を許さないボクシングを展開しています。驚異的なタフネスと勇敢さを兼ね備えたディレック・チゾラでなければ実行できない作戦ですね。
「チゾラは過去の挑戦者ができなかった作戦を実行してるよ。あとは自分からパンチを当てることができれば、局面を変えることができるんだけどな」とディレック・チゾラのボクシングに拍手を送る管理人。しかし、数々のビッグマッチを経験している「ヘビー級のボス」ビタリ・クリチコは、前に出てくるディレック・チゾラに先手を許さず、カウンターの右ストレートを叩き込み、主導権を渡しません。
試合はこのままビタリ・クリチコが後ろに下がりながら、前に出てくるディレック・チゾラにカウンターを当てる展開が続き、12ラウンド終了のゴングが鳴り響きます。結果は3人のジャッジすべてが大差でビタリ・クリチコを支持。ビタリ・クリチコがディレック・チゾラに12ラウンド判定勝ちを収め、8度目の防衛に成功しました。
ビタリ・クリチコの経験がディレック・チゾラの突進力を封じ込めた試合でしたね。5ラウンドが終わった時点で「ビタリは飛ばしすぎじゃないかな?終盤スタミナ不足で失速するかも」と思ったのですが、12ラウンド動きながらディレック・チゾラのパンチをかわして勝利を手にしました。
敗れはしましたが、ディレック・チゾラ陣営が、ビタリ・クリチコの「左ジャブで距離を取って、右ストレートで倒すボクシング」をかなり研究していたことが、ビタリ・クリチコが苦戦した最大の要因だと思います。管理人は、ビタリ・クリチコの懐に飛び込んで12ラウンド戦い抜いた挑戦者を初めて観ました。「問題児だけど、チゾラはおもしろい存在じゃない?」と世界中にアピールできたと思います。
一方、自慢の強打を封じられ、苦戦したビタリ・クリチコですが、40歳を過ぎても12ラウンド戦えるスタミナと抜群の適応力を証明した試合だったと思います。「ビタリが12ラウンド動けると、挑戦者は本当に厄介だよ。チゾラはスピードとタフネスを生かして単発のパンチを当てていたけど、連打はできなかったもんな」とビタリ・クリチコの「負けないボクシング」に徹する強さを再確認しました。
年齢を重ねるにつれて、以前の豪快なボクシングが姿を消しつつあるビタリ・クリチコ。しかし、経験を重ねるにつれて、試合の流れを読みながら勝利を手にする新たな強さを身につけ、ボクシングの幅を格段に広げています。「実戦で手にする経験って本当に大切なんだな」と改めて思ったヘビー級タイトルマッチでした。
ビタリ・クリチコ対ディレック・チゾラの試合結果
試合結果 | ビタリ・クリチコが3-0の判定勝ちで8度目のタイトル防衛に成功。 【公式ジャッジの採点結果】
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