スーパーミドル級12回戦
IBF世界ミドル級 チャンピオン |
アルツール・アブラハム(アルメニア出身・ドイツ) 戦績:26戦全勝21KO |
元IBFラテンアメリカ ミドル級チャンピオン |
エディソン・ミランダ(コロンビア出身・プエルトリコ) 戦績:32戦30勝26KO2敗 |
試合内容
一撃の破壊力と鉄壁のガードで全勝街道を突き進むIBF世界ミドル級チャンピオン、アルツール・アブラハム。ドイツを主戦場に戦うアブラハムにとって、今回のノンタイトル戦は2つの大きな意味を持っています。ひとつはアゴを骨折させられたエディソン・ミランダとの再戦であること。もうひとつはアメリカ初進出試合であることです。
アブラハムとミランダが最初に激突したのは2006年9月。IBF世界ミドル級チャンピオンに君臨するアブラハムがミランダの挑戦を受けたのですが、ミランダの強打で5ラウンドにアゴを骨折させられ、口から出血しながら残りのラウンドを戦う苦しい展開。結果は、アブラハムが3-0の判定でタイトルを防衛しましたが、試合後病院に直行したアブラハムにとってミランダは因縁の相手と言えるでしょう。
現在のミドル級は、WBC・WBOの全勝チャンピオン、ケリー・パブリックを人気、実力ともナンバーワンに推す声が強く、同じ全勝チャンピオンのアブラハムにとってはおもしろくないはず。今回のアメリカ進出で「アブラハム強し」を印象付けたいところですね。今やデラホーヤに次ぐ人気を誇るパブリックの地元、アメリカで、アブラハムがどんな戦いをするのか注目です。
序盤から仕掛けたのはミランダ。ガードをガッチリ固めて様子を見るアブラハムに対して、持ち前のパンチ力を活かしてガードの上からパンチを叩き込みます。ミランダは戦績を見るとわかるように、チャンピオンになってもおかしくない逸材です。プロで黒星を喫したのはアブラハムとパブリックの2人のチャンピオンだけ。32戦26KOの戦績通りの攻撃力です。
並みのボクサーならガードを破られてしまうでしょうが、さすがはアブラハム。ミランダの強打をことごとくブロックしてクリーンヒットを与えません。顔面もボディーもすべてブロックしてしまうのですから、アブラハムのガードが「鉄壁」と呼ばれるのも納得ですね。
試合が動いたのは3ラウンド。序盤の2ラウンドで様子を見ていたアブラハムが攻撃に転じます。開始45秒には、前に出ようとしたミランダにショートの右ストレートを合わせます。終盤には、ミランダの左ジャブに合わせて、肩ごしの右ストレートのカウンターをミランダのテンプルに打ち込み、一瞬ミランダの動きが止まります。
そして、迎えた4ラウンド。開始直後の接近戦で、アブラハムのコンパクトな右ストレートがミランダのアゴをとらえ、この試合最初のダウンを奪います。起き上がってきたミランダに対して、今まで封印していたフックを武器に、アブラハムが襲いかかります。
アブラハムの圧力に屈してミランダが下がったところに、ロングの左フックがクリーンヒット。ミランダはそのまま後ろに倒れ込み、この試合2度目のダウンです。何とか立ち上がったミランダに対して、アブラハムは再び左フックを強打。倒れたミランダはロープに後頭部を打ち付け、レフェリーが試合をストップ。因縁の相手から3度のダウンを奪う4ラウンドTKO勝ちで、アブラハムがその実力をアメリカのボクシングファンに証明しました。
アブラハムは、特にスピードがあるわけではありませんし、柔軟性があるわけでもありません。攻める時は攻めて、守る時は貝のようにガードを固めて徹底的に守る「攻防分離のボクサー」で、器用なボクサーではないんですが、「パンチの当て勘」がめちゃくちゃいいんですよね。この試合も手数を出し続けたミランダのパンチはアブラハムにことごとくブロックされ、ときどきアブラハムが打ち込むパンチはクリーンヒットなんですよ。しかも、一発の破壊力がすごい!アブラハムって本当に不思議なボクサーです。
こうなると、アメリカ進出を見事なKO勝ちで飾ったアブラハムと、アメリカで絶大な人気を誇るパブリックのミドル級最強決定戦がいつ実現するのか楽しみですね。現時点でほぼ完成されたアブラハムと、まだまだ進化を続けているパブリックはいつ拳を交えるのか?「開催時期」がミドル級最強決定戦のカギになりそうですね。
試合結果
試合結果 | アルツール・アブラハムが4ラウンドTKO勝ちで因縁の再戦に快勝。インパクトのあるアメリカ初進出試合で、アブラハムの名を刻みました。 |