複数の主戦場を持つゲンナディ・ゴロフキンはボクサーの新しい希望になれるか?
圧倒的な強さで激戦区ミドル級の頂点に君臨するWBA世界ミドル級チャンピオンのゲンナディ・ゴロフキン。アメリカとヨーロッパを行き来する超人気ファイターは5月16日(日本時間5月17日)にサウスポーのウィリー・モンロー・ジュニアを迎えて14度目の防衛戦を行います。防衛戦をすべてKOでクリアしているゲンナディ・ゴロフキンは、連続KO防衛記録を14に伸ばせるでしょうか?
「ファンのみんながKO勝ちを期待してくれることは本当にうれしいよ。私のボクシングを見て、楽しんでくれてるわけだからね。でも、KOを強く意識してリングへ上がることはないんだ。バランスが崩れてしまうからね。KOを続けられる理由は、トレーナーのアベル・サンチェスの指導と作戦のおかげだよ。私は、練習したことをリングで表現しているだけだからね」
めちゃめちゃ謙虚なゲンナディ・ゴロフキンは2012年9月にアメリカへ本格的に進出。わずか3年足らずで、男性ファンだけでなく、女性ファンからも圧倒的な人気を誇るスーパースターへ成長しました。男性ファンから絶大な人気を誇る外国人ボクサーは過去に何人か存在すると思うのですが、女性ファンから「戦うとホット、笑うとキュート」と絶賛されるボクサーは初めてじゃないかな?
【ゲンナディ・ゴロフキンはウィリー・モンロー・ジュニアをKOできるか?】
ボクシングの本場で「ミドル級最強」の地位を確立したゲンナディ・ゴロフキン。主戦場をアメリカに固定することなく、ヨーロッパでも防衛戦を行っています。最近は、アメリカで2試合戦って、ヨーロッパ(モナコ)で1試合戦うペースが続いています。個人的には「ゴロフキンの主戦場を複数確保する戦略は日本人ボクサーの理想的なモデルケースになるんじゃないかな?」と興味津々です。
ゲンナディ・ゴロフキンが主戦場をアメリカに固定しない理由は、ウラディミール・クリチコの存在が大きいと思います。兄のビタリ・クリチコとK2プロモーションズを設立したウラディミール・クリチコは世界が認める「史上最強の兄弟ボクサー」。でも、ウラディミール・クリチコの「リスクを回避しながら勝つボクシング」はヘビー級の本場アメリカでは受け入れられませんでした。
ボクシングに限らず、アメリカは、スポーツの世界でも、ビジネスの世界でも、まず「ようこそUSAへ」と歓迎してくれる風潮があります。ところが、期待値を超えられないことがわかると、歓迎ムードは消え去り、激しいバッシングの標的になります。スポーツファンの皆さんは、大リーグに挑戦して苦戦する日本人プレイヤーを想像していただくと、わかりやすいかもしれません。
マニー・パッキャオをはじめ、バッシングに打ち勝ち、最大級のリスペクトを勝ち取った海外出身のスーパースターもいるわけですが、スキルはもちろん、メンタルの強さや環境への適応力が要求されます。正直なところ、日本人は、言語を含め、他国の文化に溶け込むことに不慣れなので、マニー・パッキャオと同じスーパースター街道は、めっちゃ困難な道のりになるはずです。
そんなわけで、主戦場を固定せず、ファイトマネーやスポンサーの収入源を複数確保しながら「急がば回れ」でビッグマッチを目指すゲンナディ・ゴロフキンの戦略は、めっちゃ興味深いケースです。幸い、日本は経済大国。日本を主戦場にしながら、早い段階で、アメリカ参戦を果たし、実力を証明しながら、ビッグマッチを目指すほうが、近道になるケースがあるかもしれませんね。
たくさんの世界チャンピオンを生み出した日本ボクシング界。もしかすると、世界的なスーパースターが誕生する日は、そう遠くないのかもしれません。だからこそ、ひとつのモデルケースに依存せず、ヒーロー誕生の可能性を広げてほしいと願っています。ゲンナディ・ゴロフキンのような世界でリスペクトされるスーパースターが日本からも誕生しますように。