マニー・パッキャオが「ボクシング史上最高の英雄」と称賛される理由とは?
リングの上をピョンピョンと飛び跳ねる動物的なフットワーク。相手の懐へ一瞬で飛び込む鋭いステップイン。目の前のボクサーの意識を奪う必殺の左ストレート。躍動感のある攻撃的なボクシングで世界中のファンを魅力する「フィリピンの英雄」マニー・パッキャオ。5月2日(日本時間5月3日)プロのリングで負けを知らない「天才」フロイド・メイウェザーと対戦します。
ボクシング一家に生まれ育ち、父のフロイド・メイウェザー・シニアと叔父(おじ)のロジャー・メイウェザーから英才教育を受けてきた「ボクシングエリート」フロイド・メイウェザー。一方、マニー・パッキャオは「エリート」とは無縁の世界で暮らし、生活費を稼ぐために試合を繰り返していた「雑草ボクサー」です。デビュー当時は目立った存在ではありませんでした。
もし20世紀に「メイウェザーとパッキャオは将来、必ず対戦する。両雄の試合はボクシング史上最大のイベントになるだろう」と予言した人がいたなら「占い界のパウンド・フォー・パウンド」です。誰も想像できなかったマニー・パッキャオ対フロイド・メイウェザーの世紀のメガマッチ。マニー・パッキャオがフィリピンを飛び出し、アメリカへ渡ったことで、運命の歯車が回り始めました。
【不可能を可能にする奇跡のボクサー!新たな奇跡を起こせるか?】
2001年6月、マニー・パッキャオは全米デビュー戦のリングに立っていました。対戦相手は、IBF世界スーパーバンタム級チャンピオンのリーロ・レジャバ。アメリカ人の友人から「カンフー映画なら、オープニング直後にやられちゃう脇役タイプに見えるけど、パッキャオは強いの?日本でも有名?」と質問され「いやー、よくわかんない。強いのかな?」と答えたことを思い出します。
第一印象は「お世辞にもオシャレとは言えない髪型だなあ」でした。ところがどっこい、金髪が微妙に似合っていない「やんちゃ坊主」は、リーロ・レジャバに何もさせず、あっさりと世界タイトルを獲得。笑顔でファンに手を振るサウスポーは、脇役ではなく、主役だったのです。世界中の強豪を次々と飲み込み、ボクシング界の頂点へのぼり詰めた「パックマンの快進撃」がスタートしました。
マルコ・アントニオ・バレラ、エリック・モラレス、ファン・マヌエル・マルケス、オスカー・デラホーヤ、リッキー・ハットン、ミゲール・コット、アントニオ・マルガリート、シェーン・モズリー。マニー・パッキャオは「各階級で最も強い」と言われるボクサーを次々と撃破。信じられない快進撃でファンを魅了し、アメリカンドリームを実現しました。
ボクシング史上2人目の6階級制覇を達成したマニー・パッキャオ。初の世界タイトルを獲得したフライ級と6階級制覇を成し遂げたスーパーウェルター級の階級差は「10」です。世界タイトルを獲得していない階級を残した「飛び級の6階級制覇」なので「実質的な10階級制覇」と呼べるかもしれません。もちろん「実質的な10階級制覇」は史上初の「偉大すぎる隠れ記録」です。
ボクシングの世界で大成功を手にしたマニー・パッキャオは2010年5月、母国フィリピンの選挙に当選。プロボクサーとして、国会議員として、名実ともに「フィリピンの英雄」になりました。世界中のボクシングファンが「絶対に勝てない」と感じたマッチメイクにも真っ向から挑戦。どんな状況でも「不可能」の文字を「チャンス」と読み、挑戦を続けることで未来を切り開きました。
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