WBA世界ウェルター級タイトルマッチ
チャンピオン | ミゲール・コット(プエルトリコ) 戦績:32戦全勝26KO |
挑戦者 | アントニオ・マルガリート(メキシコ) 戦績:42戦36勝26KO5敗1無効試合 |
試合内容
ボクシングの全17階級で最も強豪が集まると言われるウェルター級。その中で、最強の呼び声が高いボクサーがWBA世界ウェルター級チャンピオンのミゲール・コットです。2008年6月にフロイド・メイウェザーが引退を表明したことで、プエルトリコが生んだ名勝負製造機、コットをウェルター級最強ボクサーに推す声はますます強まっています。
身長173センチ、リーチ170センチはボクサーとして決して恵まれた体格ではありませんが、32戦全勝26KOのパーフェクトレコード。これまでコットが打ち破ってきたチャンピオン、元チャンピオン、将来のチャンピオンは実に10人にのぼります。その中にはシェーン・モズリー、ザブ・ジュダー、カルロス・キンタナ、ポール・マリナッジ、リカルド・トーレスの名前も含まれています。強い対戦相手に勝ち続けながら、陽のあたる道を歩んできたボクサーこそ、コットなんです。
ボクシング関係者、ボクシングファンから高い評価を得るコットが、今回挑戦者に迎えた相手はアントニオ・マルガリート。全ボクサーの中でもトップクラスのタフネスを誇る、好戦的なファイターで、一部ではマルガリートをウェルター級最強に推す声もあるほど、その実力は誰もが認めるところです。しかし、フロイド・メイウェザーが対戦を嫌がるなど、その強さゆえにビッグマッチに恵まれてきませんでした。コットが「陽」なら、マルガリートは「陰」。正反対の道のりを歩んできたボクサー同士のウェルター級最強決定戦は「死闘」と呼ぶにふさわしい激戦となりました。
試合は序盤から一進一退の息詰まる攻防。挑戦者のマルガリートが前に出てプレッシャーをかけながらパンチを集めるのに対して、チャンピオンのコットは足を使って距離を保ちながら回転の速いパンチで応戦します。マルガリートが強烈なプレッシャーをかけるのですが、コットがロープを背にしながらも上手く戦っている印象です。
2ラウンドに入ると、マルガリートがますますプレッシャーを強め、コットがロープに押し込まれる場面が目立ちます。そして、迎えた1分過ぎ。マルガリートの右ボディーがコットのみぞおちにクリーンヒット。一瞬コットの腰が落ちますが、左右のフックを連打し、マルガリートの反撃を食い止めながら、強烈な左アッパーで反撃。並みのボクサーならダウンするほどのパンチがマルガリートのアゴにクリーンヒットしますが、マルガリートはケロッとしています。マルガリートの打たれ強さは尋常じゃないですね。
コットは上手く戦いながらポイントを取っている印象ですが、ダメージはマルガリートより深そうです。一方、マルガリートもコットのパンチをまともにもらう場面が多く、さすがに苦しそう。前に出てパンチを打ち続けないと、コットに逃げられて勝機を失ってしまうマルガリート。体を振って動き続けないとマルガリートの連打に捕まってしまうコット。「極限の我慢比べ」が続きます。
コット、マルガリート、お互いに苦しい状態で迎えた7ラウンド。試合が大きく動きます。前に出続けてプレッシャーをかけるマルガリートに対して、ロープに詰められると体を入れ替えてマルガリートの攻撃を上手くかわしていたコットですが、開始から1分コーナーに詰められてしまいます。ここでマルガリートがコットの右フックに合わせて、相打ち覚悟の右フック。マルガリートが放った決死の一撃がコットの顔面をクリーンヒットし、コットの動きが止まります。
ここからマルガリートが怒涛のラッシュ!抜群のディフェンスを誇るコットが防ぎきれないほどのパンチを連打し、特にインサイドからのアッパーとボディーブローが効果抜群。勝負どころで上下へ打ち分けられるマルガリートの冷静さは本当に素晴らしいです。普段から練習していなければできない戦術ですね。終了間際にもコットをロープへ追い詰めて、顔面、ボディーへパンチを集め、チャンピオンのコットを力でねじ伏せるボクシングを展開します。ゴングに救われ、このラウンドを凌いだコットですが、意識がもうろうとしている状態で、体力的、精神的な限界が近づいている感じです。