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ウラディミール・クリチコがトニー・トンプソンと第二の故郷ドイツで激突

IBF・WBO世界ヘビー級タイトルマッチ

チャンピオン ウラディミール・クリチコ(ウクライナ)
戦績:53戦50勝44KO3敗
挑戦者 トニー・トンプソン(アメリカ)
戦績:32戦31勝19KO1敗

ウラディミール・クリチコ対トニー・トンプソンの試合内容

「ヘビー級最強」の呼び声高いウラディミール・クリチコが第二の故郷ドイツで防衛戦を行います。2008年2月にWBO世界ヘビー級チャンピオンに君臨していたスルタン・イブラギモフを判定勝利で下し、ヘビー級タイトルを統一したウラディミール・クリチコ。しかし、慎重すぎる(リスクを冒してKOを狙いにいかない)ボクシングスタイルのためか、好き嫌いがはっきり分かれています。

ドイツで絶大な人気を誇るチャンピオンが、アメリカからの刺客、トニー・トンプソンを退けることができるのか?結果だけでなく、試合内容が問われる防衛戦は静かな立ち上がりとなりました。

まずペースを握ったのは挑戦者のトニー・トンプソン。両手で顔面、ボディーをすっぽり覆う鉄壁のガードでウラディミール・クリチコの右ストレートをシャットアウトし、チャンスと見るや、コンパクトなパンチを集め、ポイントを奪います。

2メートルのウラディミール・クリチコに対して、196センチのトニー・トンプソンは体格面で全く見劣りせず、堂々とした立ち上がりです。ウラディミール・クリチコのプレッシャーに飲み込まれることなく、第一関門は突破したようですね。

一方のウラディミール・クリチコは、いつもなら左ジャブを突いて相手にダメージを与えるのですが、サウスポーのトニー・トンプソン対策か、左をジャブではなく、トニー・トンプソンの右ジャブを払うためのディフェンスに使っています。そのため、右ストレートの一発狙いという単調な立ち上がりになっているようです。

スルタン・イブラギモフとの統一戦もそうでしたが、ウラディミール・クリチコは器用なボクサーではないので、左を守備に使ってしまうと、攻撃が単調になり、全くリズムが作れなくなってしまう弱点があります。トニー・トンプソンを警戒する気持ちはわかりますが、もう少し手数がほしいところですね。

挑戦者のトニー・トンプソンもウラディミール・クリチコの強打を警戒するあまり、ガードに重点を置き、攻撃へ移ることができません。ウラディミール・クリチコの強打をほぼ完璧にブロックする鉄壁のガードは見事ですが、敵地ドイツでのタイトルマッチであることを考えると、もう少し積極的な攻撃姿勢がほしいですね。

試合は両者がお互いのパンチを警戒する展開が続き、大きなヤマ場もないまま10ラウンドを迎えます。「これは判定決着が濃厚だな」と思い始めた残り15秒。トニー・トンプソンにもたれかかるようにクリンチをするウラディミール・クリチコの左足がトニー・トンプソンの右足を踏み、両者がもつれるように倒れ込みます。

この転倒でトニー・トンプソンは足を痛めた様子。右足を引きずりながら、顔をしかめています。「もしかすると、セコンドが止めるかも」と思ったのですが、11ラウンド開始から勝負に出たのは、挑戦者のトニー・トンプソンでした。持てる力を振り絞るようにパンチを強振します。

しかし、ウラディミール・クリチコにブロックやスウェイバックかわされ、クリンチをしたときに再び転倒してしまいます。顔をしかめて立ち上がるトニー・トンプソン。断固としてTKO負けを拒否する挑戦者を待っていたのは、ウラディミール・クリチコのラッシュでした。

ウラディミール・クリチコはこれまでのじっくり相手を観察する戦い方から、体ごと一気に前進する攻撃へシフトします。猛攻を仕掛け、迎えた11ラウンド1分30秒。ウラディミール・クリチコがトニー・トンプソンの左ストレートをダッキングでかわし、右ストレートのカウンターをアゴに叩き込みます。

一瞬、時間をおいて、前のめりに崩れるトニー・トンプソン。体力を使い果たしたトニー・トンプソンはダウンから立ち上がることができず、ウラディミール・クリチコが第二の故郷ドイツでKO防衛に成功しました。

ウラディミール・クリチコが手堅いボクシングでトニー・トンプソンを退けた試合でしたね。立ち上がりの1ラウンドを除き、ほぼフルマークでポイントを獲得し、終盤にKO勝ちを収めたウラディミール・クリチコ。試合内容は盤石と呼べるかもしれませんが、何か物足りなさを感じた管理人でした。

この試合に限らず、ウラディミール・クリチコの試合は「ボクシングファンを熱くさせる何か」が欠けているような気がします。勝負に徹するウラディミール・クリチコの姿勢はもちろん理解できますが、プロボクサー、そしてヘビー級の統一チャンピオンの試合内容としては、やはり物足りない気がします。

「世界中のボクシングファンが何を求めているのか?」をはっきりさせるため、できるだけ早くWBC世界ヘビー級チャンピオン、サミュエル・ピーターとの統一戦が実現してほしいです。

ウラディミール・クリチコは、サミュエル・ピーターに唯一の黒星を付たボクサーで、サミュエル・ピーターにとってリベンジマッチとなるだけに、盛り上がることは間違いないと思います。

ヘビー級最強の呼び声が高いウラディミール・クリチコに勝てるのも、眠れる力を引き出すことができるのも、野性味溢れるサミュエル・ピーター以外にいないでしょう。今年中に実現してほしいなあ。

ウラディミール・クリチコ対トニー・トンプソンの試合結果

試合結果 ウラディミール・クリチコが11ラウンドKO勝ちで防衛に成功。
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