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打倒オスカー・ラリオス!粟生隆寛が世界初挑戦でタイトル奪取なるか?

WBC世界フェザー級タイトルマッチ

チャンピオン オスカー・ラリオス(メキシコ)
戦績:70戦63勝40KO6敗1分
挑戦者 粟生隆寛(日本・帝拳ジム)
戦績:17戦16勝8KO1分

試合内容

全勝の日本人ボクサー、粟生隆寛(あおう・たかひろ)選手が悲願の世界タイトル奪取をかけて、初の世界戦に挑みます。史上初の高校6冠達成、日本フェザー級タイトル獲得と順風満帆なボクシング人生を歩んできた粟生選手が対戦するのはWBC世界フェザー級チャンピオンのオスカー・ラリオス。スーパーバンタム級、フェザー級の2階級制覇を達成した実力者です。

ラリオスはスーパーバンタム級チャンピオン時代に福島学選手や仲里繁選手などの日本人ボクサーと戦い、いずれも勝ちを収めている日本人キラー。「くっついてよし、離れてよし」のラリオスに対して、世界初挑戦の粟生選手がどのような作戦を立ててくるのか?注目の世界戦は「激戦」と呼ぶにふさわしい素晴らしい試合となりました。

序盤いきなり仕掛けたのは挑戦者の粟生選手。試合開始直後、ラリオスの右ストレートに対して、いきなり左ストレートのカウンターを打ち込みます。このパンチにはさすがのラリオスも驚いたようで、普段なら1ラウンドからドンドン前へ出てプレッシャーをかけるラリオスが前進を躊躇しているようです。

粟生選手は1ラウンド終了間際にも右アッパーを突き上げてラリオスのアゴを跳ね上げるなど、初の世界戦とは思えない堂々とした戦いっぷり。序盤めっぽう強いラリオスに対して、これだけ応戦できるボクサーは世界的に考えても稀ではないでしょうか。粟生選手の積極的で勇敢なボクシングにタイトル奪取の期待が高まります。

そして、迎えた4ラウンド、ラリオスが粟生選手をロープへ追い詰めて、右ストレートを打ち込もうとしたタイミングで、粟生選手が右フックを強振。お互いのパンチが顔面をとらえますが、グロッキーになるほどのダメージを負ったのはチャンピオンのラリオスでした。

思わず「よっしゃー!」と叫ぶ管理人。ところが、ここで予想外の出来事が起こります。グロッキーになったラリオスに対して、粟生選手が追い打ちの左ストレートを打ち込もうとしたのですが、ラリオスは粟生選手の左ストレートをダッキングでかわして、そのままダウンしたのです。

粟生選手の右フックのダメージが遅れてやってきて、偶然そのタイミングでダウンしたのかもしれませんし、もしかすると粟生選手の追撃を避けるため、ラリオスが意図して自らダウンを選んだのかもしれません。真実はラリオスにしかわかりませんが、もし追撃の左ストレートをもらっていたら、ラリオスは立ち上がれなかったでしょう。しかし、このダウンでラリオスは粟生選手の追撃を避け、歓声が鳴り響く東京代々木第1体育館のリング上で8秒以上休む(ダメージを回復する)ことができたんです。

そして、粟生選手が世界戦で初めて奪ったダウンにより、試合は大きく動き出します。粟生選手の右フックと偶然のバッティングによって左右の目じりをカットしたラリオスは接近戦ではなく、足を使って離れて戦う作戦に変更。一方、これまでサウスポーの利点を活かして、右回りのボクシングをしていた粟生選手がラリオスの真正面から攻撃するようになり、パンチを当てるものの、パンチをもらってしまう場面も目立つようになります。

5ラウンドに再び粟生選手が右フックをラリオスのテンプルにクリーンヒットさせると、ここからラリオスが完全に距離を取り、体力回復を図りながら、左ジャブでポイントを取るボクシングに切り替えます。パンチを振り回して戦う豪快なボクシングのイメージが強いラリオスですが、実はアウトボクシングも上手いんですよね。逆に粟生選手はダウンを奪ってからパンチが減り、ポイントを奪われてしまいます。

8ラウンド終了時に公開されたジャッジの採点は1人がラリオス、1人が粟生選手、1人がドローの三者三様。「残り4ラウンド、苦しいけど頑張れ、粟生選手」と声を出して応援する管理人。その声が届いたのか、9ラウンド開始から粟生選手がパンチを集めます。しかし、ラウンドが進むにつれて疲れが見え始め、パンチの打ち終わりに体が流れる場面が増えてきます。逆に、ラウンドの終了間際にはラリオスの右ストレートが粟生選手のアゴにクリーンヒット。

ラスト4ラウンドは本当に死闘でした。ラリオス、粟生選手ともダメージと疲労が蓄積し、どちらが倒れてもおかしくない状態の中、ラウンドの序盤は粟生選手、中盤以降はラリオスが攻勢を仕掛ける展開が続き、12ラウンド終了のゴングが鳴り響きます。「判定はかなり競っているよね」と思いながら、管理人の採点を集計すると、114-112でラリオスの勝利。リングサイドで観ている3人のジャッジはどう判断するのか?

1人目のジャッジは115-111でラリオスの勝ち。2人目は114-112で粟生選手の勝ち。そして、運命の3人目。結果は114-112でラリオスの勝ちでした。この瞬間、粟生選手の世界タイトル奪取という夢は破れてしまいましたが、チャンピオンと挑戦者のプライド、勝利への執念がぶりかり合った本当に素晴らしい試合だったと思います。

粟生選手はこの試合でプロ初黒星を喫してしまいましたが、粟生選手の評価はむしろ高まったのではないでしょうか。正直なところ、管理人は「ラリオスの攻撃的なボクシングに粟生選手に巻き込まれて本来のボクシングができず、ジリ貧になるんじゃないかな」と予想していました。ところが、蓋を開けてみると、実に勇敢なボクシングで、2階級制覇チャンピオンのラリオスに一歩も引けを取らないどころか、ダウンを奪い、チャンピオンを苦しめたのです。

ここ数年でラリオスをこれだけ苦しめたボクサーは、アジアの英雄、マニー・パッキャオと、前WBC世界フェザー級チャンピオンのホルヘ・リナレスの2人しかいません。粟生選手が持つポテンシャルは誰もが認めるところです。日本人の現役世界チャンピオンと比較しても、技術的な部分では全く見劣りするところがありません。今回は世界タイトルを奪取することができませんでしたが、世界的な実力者ラリオスと戦った経験は粟生選手の大きな財産になるはずです。

おしまいに、最近世界タイトルマッチでチャンピオンと挑戦者が別々の色のグローブをつけて戦うことが増えてきましたが、膨張色の赤いグローブのほうが、黒いグローブに比べてパンチに迫力があるように感じます。ジャッジに与える印象も少なからず変わってくると思いますので、できれば世界戦は同じグローブで戦ってほしいものです。

試合結果

試合結果 オスカー・ラリオスが2-1の判定勝ちでタイトル防衛に成功。管理人の採点は114-112でオスカー・ラリオスの勝ちでした。
【公式ジャッジの採点結果】
  • 115-111(ラリオス)
  • 114-112(ラリオス)
  • 114-112(粟生選手)
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WBC世界スーパーフェザー級チャンピオンの三浦隆司選手も同じイベントに登場します。

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