WBO世界ウェルター級タイトルマッチ
チャンピオン | マニー・パッキャオ(フィリピン) 戦績:58戦53勝38KO3敗2分 |
挑戦者 | ファン・マヌエル・マルケス(メキシコ) 戦績:59戦53勝39KO5敗1分 |
マニー・パッキャオ対ファン・マヌエル・マルケス(第3戦)の試合内容
6階級制覇を成し遂げ、「パウンド・フォー・パウンド」の称号を手にするマニー・パッキャオ。3階級制覇を達成し、「最も勇敢なボクサー」として強烈な存在感を放つファン・マヌエル・マルケス。名勝負を生み出してきた宿命のライバルが決着をつけるため、3度目の決戦の舞台へ上がります。
世界中のボクシングファンが待ちわびた「パッキャオ対マルケス」の第3戦は、ウェルター級チャンピオンのマニー・パッキャオとライト級チャンピオンのファン・マヌエル・マルケスの体格差を考慮し、両陣営が合意したキャッチ・ウエイト(ウェルター級リミットより3ポンド軽い144ポンド)で行われます。
体重のほかに注目すべき数字がもうひとつ。両者のファイトマネーです。「パッキャオ対マルケス」の第3戦のファイトマネー(最低保証額)は、マニー・パッキャオが2200万ドル、ファン・マヌエル・マルケスが500万ドル。この金額にペーパービューの売り上げが上乗せされます。ビッグマッチにふさわしい桁違いのファイトマネーですね。
世界中のボクシングファンに衝撃を与えた2004年5月の初対決、世界中のボクシングファンが「最高のリマッチ」と賞賛した2008年3月の再戦。リマッチから3年8か月の月日が流れ、宿命のライバルが激突する因縁の最終決戦はどんな結末が待っているのでしょうか?決着戦の始まりを告げる運命のゴングが鳴り響きます。
試合は、これまでの2戦と同じく、上半身を振りながら踏み込んで左ストレートを打ち込むタイミングを計るマニー・パッキャオに対して、ファン・マヌエル・マルケスが左ジャブで距離を取りながら右ストレートのカウンターを狙う展開で始まります。どちらも相手の出方を確認しながら戦っている落ち着いた立ち上がりですね。
「パッキャオもマルケスも過去2戦と違って手数が少ないな。2試合戦っているんで、お互いに手の内が分かっていて戦いづらそうだよ。さあ、どっちが主導権を握るかな?」と緊張感溢れるリング上の戦いに視線を送る管理人。「バチバチ」という感じではなく、「ピリピリ」とした雰囲気がリングを包みこんでいます。
試合序盤は、ファン・マヌエル・マルケスが得意のコンビネーションを駆使してマニー・パッキャオを懐へ入れない見事なボクシングを披露します。特に、左アッパーから右ストレートのコンビネーションが抜群ですね。一方のマニー・パッキャオは得意の左ストレートをことごとく避けられ、リズムが作れません。
4ラウンドに入ると、マニー・パッキャオがリズムをつかむため、これまで以上に体を振りながら大きく動き、出入りのスピードを一段上げてプレッシャーを強めます。さらに、右側(ファン・マヌエル・マルケスの左側)に踏み込むことで、左ストレートが当たりやすい展開を作ろうと工夫しながら戦っています。
これまで打ち倒してきた相手なら、マニー・パッキャオのプレッシャーに負けて逃げ場を失い、ガードを固めたところを一方的に打たれる展開となるのですが、ファン・マヌエル・マルケスは得意の左ボディーブローをマニー・パッキャオに叩き込み、「右側(マルケスの左側)に回り込むなら、ボディーを打ち込むよ」とメッセージを送りながら応戦。さすがはファン・マヌエル・マルケス。マニー・パッキャオの天敵ですね。
「パッキャオが思った以上に戦いづらそうだぞ。マルケスは左ジャブ、左フック、左ボディーを使って効果的にポイントを奪いながら、得意の右ストレートでビッグチャンスを作りたいよ」とファン・マヌエル・マルケスのボクシングに注目する管理人。ファン・マヌエル・マルケスは上下にパンチを散らしながら、マニー・パッキャオにダメージだけでなく、「迷い」を与えたいですね。
5ラウンドまで観戦し、「体重を上げても動きの量と質が変わらず、しかもパワーが増したマルケス。減量して生命線の手数と運動量を失ってしまったパッキャオ」という印象を受けた管理人。しかし、6ラウンドに入ると、世界の強豪を連破し続けてきた「パウンド・フォー・パウンド」が逆襲を開始します。
代名詞である右ジャブからの強烈な左ストレートを封じられたマニー・パッキャオは、左ストレートをリードジャブに使い、ファン・マヌエル・マルケスの目線を変えようとします。さらに、左ストレートを顔面だけでなく、ボディーへ散らしながらパンチを先手先手で打ち込むことで、少しずつリズムが生まれるようになってきました。
一方のファン・マヌエル・マルケスは、序盤よりバックステップを増やしてマニー・パッキャオの攻撃を回避。しかし、ディフェンスを重視するあまり、手数が減ってしまい、得意のコンビネーションが姿を消すようになってしまいました。
ときどき、ファン・マヌエル・マルケスの力強いカウンターがマニー・パッキャオをとらえるシーンがあるのですが、ファン・マヌエル・マルケスらしい畳みかける攻撃はなく、追撃してダメージを与えることができません。
試合が進むにつれて、マニー・パッキャオが手数でファン・マヌエル・マルケスをディフェンスに追い込む場面が増え、迎えた8ラウンド終盤、マニー・パッキャオの左ストレートがファン・マヌエル・マルケスの顔面にヒットします。当たりが浅いパンチでしたが、少しずつタイミングが合ってきましたね。
9ラウンドに入ると、マニー・パッキャオが左アッパーを多用して、ファン・マヌエル・マルケスにプレッシャーをかけます。一方のファン・マヌエル・マルケスは左アッパーから右ストレートのコンビネーションを中心に応戦。お互いのボクシング技術とプライドが交差する一進一退の攻防が続き、会場に詰めかけたファンがスタンディングオベーションで称えます。
試合終盤に入ると、マニー・パッキャオとファン・マヌエル・マルケスのどちらにも疲れが見え始め、お互いに気力を振り絞って戦いますが、決定打を打ち込めないまま12ラウンド終了のゴング。世界中のボクシングファンが息をのんだ最終決戦の勝敗は3人のジャッジに委ねられます。
結果は1人が引き分け、2人がマニー・パッキャオを支持。世界の強豪を次々に撃破する「パウンド・フォー・パウンド」マニー・パッキャオがファン・マヌエル・マルケスに12ラウンド2-0の判定勝ちを飾り、ライバル対決に終止符を打ちました。
宿命のライバル対決にふさわしい息詰まる決戦でしたね。クリーンヒットこそ少なかったですが、最後までパンチを出し続けたマニー・パッキャオの攻撃姿勢が評価された内容だったと思います。「最後まで相手を打ち倒そうする闘争心」こそ、マニー・パッキャオの強さの秘密だと改めて実感した試合でした。
一方のファン・マヌエル・マルケスはマニー・パッキャオの攻撃を上手く封じ込めた内容でしたが、過去2戦と比べてディフェンスを重視したため、結果的にカウンター狙いに終始する展開となり、最後まで攻撃に出ることができませんでした。
試合序盤は「マルケスのカウンターの威力を知っているパッキャオが警戒して踏み込めないな」と思ったのですが、中盤以降は「パッキャオの破壊力を知っているマルケスはディフェンスに気を使いすぎて、リスク覚悟で勝負に出られないな」と思った試合でした。同じ相手と何度も戦うことの難しさが、にじみ出た内容だったと思います。
世界屈指のテクニックと駆け引きを堪能することができたマニー・パッキャオとファン・マヌエル・マルケスの最終決戦。ライバル対決が持つ独特の緊張感、そしてオトナになったマニー・パッキャオとファン・マヌエル・マルケスのボクシングが印象に残った試合でした。
マニー・パッキャオ対ファン・マヌエル・マルケス(第3戦)の試合結果
試合結果 | マニー・パッキャオが12ラウンド2-0の判定勝ちで3度目の防衛に成功。管理人の採点は116-112でマニー・パッキャオの勝ちでした。 【公式ジャッジの採点結果】
|