攻防分離のボクシングスタイルを貫くミドル級屈指の試合巧者
ドイツ出身のフェリックス・シュトルムは、鋭い左ジャブと鉄壁のガードを武器に世界の頂点を極めた技巧派ボクサーです。年齢を重ねるにつれて、階級を上げるボクサーが多いのですが、フェリックス・シュトルムは10年以上もミドル級で戦い続けています。
アマチュア時代に身につけた基本に忠実なスタイルで「相手を打ち倒すボクシング」ではなく「ポイントを積み重ねて勝つボクシング」に重きを置いたボクシングを昇華させたところにフェリックス・シュトルムの強さがあると思います。
フェリックス・シュトルムの戦い方はとてもシンプルで、ガードを高く構えて相手のパンチをブロックし、相手の攻撃が終わると、左ジャブを連打してポイントを奪います。キャリアを重ねるにつれて、右ストレートと右アッパーを打ち込む攻撃的なボクシングにシフトしています。
同時期にミドル級チャンピオンに君臨したケリー・パブリックやアルツール・アブラハムに比べて、派手さはありませんが、「堅実」という言葉が似合うボクサーですね。
もしかすると、日本やアメリカではあまり人気が出ないタイプかもしれませんが、ボクシングを「芸術」と考える傾向が強い地元ドイツでは絶大な人気を誇っています。ドイツのボクシング界は多国籍なので、ドイツ出身のフェリックス・シュトルムの人気はすごいです!
技巧派ボクサーのフェリックス・シュトルムはシドニーオリンピックにドイツ代表として出場後、プロに転向。2001年1月のプロデビューからわずか2年7か月後の2003年9月、エクトール・ベラスコが持つWBO世界ミドル級タイトルに挑戦し、僅差の判定勝ちで世界タイトルを手にします。
無敗のまま世界チャンピオンに君臨したフェリックス・シュトルムの名前が世界に知れ渡るまで長くはかかりませんでした。2004年6月、前人未到の6階級制覇を目指す「ゴールデンボーイ」オスカー・デラホーヤが、フェリックス・シュトルムの持つWBO世界ミドル級タイトルへ挑戦したのです。
「ボクシング史上最も成功を収めたボクサー」オスカー・デラホーヤの6階級制覇がかかる大一番で、より輝いたボクサーはフェリックス・シュトルムでした。持ち味の左ジャブと鉄壁のガードで「ゴールデンボーイ」に本来のボクシングをさせなかったのです。
しかし、時代はフェリックス・シュトルムを選ぶことなく、僅差の判定でオスカー・デラホーヤが6階級制覇を達成。フェリックス・シュトルムにとって、不本意なプロ初黒星でした。
ドイツが生んだ試合巧者は、再び世界チャンピオンを目指して、初黒星からわずか3か月でリングへ復帰。2004年9月に空位のWBOインターコンチネンタル・ミドル級タイトルを獲得し、防衛を重ねながら、世界戦のチャンスを待ちます。迎えた2006年3月、マセリノ・マスーが持つWBA世界ミドル級タイトルに挑戦し、12ラウンド判定勝ち。再び世界タイトルを手にします。
2006年7月の初防衛戦で、ハビエル・カスティリェホに10ラウンドTKO負けでタイトルを失いますが、2007年4月、再戦でハビエル・カスティリェホに12ラウンド判定勝ちを飾り、3度目の世界タイトルを奪取します。プロ初のKO負けを喫した相手に快勝し、フェリックス・シュトルムの進化をみせつけた試合でした。
その後は着実に防衛を重ね、ジェイミー・ピットマン戦で攻撃的なスタイル、佐藤幸治選手を迎えた防衛戦で冷静な試合運びを披露し「うまくスタイルチェンジに成功しているね。戦うたびにボクシングの幅が広がってる気がする」と改めてフェリックス・シュトルムの実力を実感しました。
2012年9月、IBF世界ミドル級チャンピオンのダニエル・ギールと統一戦で激突したフェリックス・シュトルム。試合前「シュトルムが有利だろうなあ」と予想していましたが、結果は、無念の12ラウンド判定負け。大事な王座統一戦で痛恨の黒星を喫してしまいます。
再起をかけるフェリックス・シュトルムは2013年12月、IBFチャンピオンのダーレン・バーカーに挑戦。ダニエル・ギールを撃破したダーレン・バーカーに2ラウンドTKO勝ちを飾り、王座返り咲きに成功。フェリックス・シュトルムの力強いボクシングが印象的な4度目の戴冠でした。
サム・ソリマンにタイトルを奪われたフェリックス・シュトルムは2014年11月、スーパーミドル級のテストマッチで同じドイツを主戦場にするロバート・スティーグリッツと激突します。結果は12ラウンド引き分け。体力で押し切ろうとするロバート・スティーグリッツの猛攻に耐えながら反撃する一進一退の攻防が続いた名勝負でした。
めまぐるしくスターが入れ替わる激戦区ミドル級で10年以上トップ戦線で活躍し、2階級制覇の新たな挑戦をスタートしたフェリックス・シュトルム。悲願の2階級制覇を成し遂げ、健在ぶりをアピールすることができるでしょうか?「堅実なボクシング」を貫くベテランの最終章に注目しましょう。スーパーミドル級でどれだけ戦えるのか、めちゃくちゃ楽しみですね!
フェリックス・シュトルムのプロフィール
誕生日 | 1979年1月31日 |
戦績 | 47戦39勝18KO4敗3分1無効試合 |
獲得タイトル |
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