スーパーミドル級12回戦(スーパー・シックス 第2ステージ)
前IBF世界 ミドル級チャンピオン |
アルツール・アブラハム(アルメニア) 戦績:31戦全勝25KO |
WBC世界 スーパーミドル級2位 |
アンドレ・ディレル(アメリカ) 戦績:19戦18勝13KO1敗 |
試合内容
スーパーミドル級最強を決めるボクシング・トーナメント、スーパー・シックスの第2ステージ。全勝を誇る強打のKOキング、アルツール・アブラハムが、アテネ・オリンピック銅メダリストのアンドレ・ディレルと激突します。正反対の特徴を持つボクサーの「パワー対スピード」の戦いになりそうですね。
第1ステージでジャーメイン・テイラーに劇的なKO勝ちを収めたアルツール・アブラハム(ジャーメイン・テイラーは敗戦後にスーパー・シックス棄権を表明)。勝ち点3を獲得し、第1ステージ終了時点で首位に立っています。一方のアンドレ・ディレルはカール・フロッチに際どい判定負けを喫し、勝ち点0で苦しい立場に追い込まれています。
全勝で首位に立つアルツール・アブラハムがさらに勝ち点を積み重ねて決勝トーナメント出場に王手をかけるのか?それとも、地元アメリカの声援を受けて戦うアンドレ・ディレルが金星を奪って、勝ち点と主役の座を手にするのか?第2ステージ屈指の好カードが幕を開けます。
試合序盤ペースを握ったのは「マトリックス」の異名を持つスイッチヒッターのアンドレ・ディレル。自慢のスピードを生かして、回転の速い連打を上下に打ち分け、アルツール・アブラハムに反撃のチャンスを与えません。いつも通りガードを高く構えて相手のボクシングを観察するアルツール・アブラハムですが、ガードの間を上手く狙われ、パンチをもらう場面が目立ちます。鉄壁のガードを誇るアルツール・アブラハムにしては、とても珍しい光景です。
「さすがのアブラハムもディレルのスピードに手を焼きそうだよ。アブラハムは早めにディレルのボディーを叩いて足を止めたいね」と試合の行方を見守る管理人。2ラウンドに入ると、アルツール・アブラハムが少しずつプレッシャーを強めますが、アンドレ・ディレルは回転の速い連打を打ち続けて、アルツール・アブラハムをガードに専念させ、試合のペースを渡しません。
これまでの対戦相手はアルツール・アブラハムが出てくると、強打を避けるため、ガードを固めるか、距離を取るボクサーが多かったのですが、アンドレ・ディレルはパンチを連打することで、アルツール・アブラハムの「両手」をガードに使わせ、強打を打たせない作戦のようです。しかも、アンドレ・ディレルの左ストレート、左フックのボディーブローが効果的!アルツール・アブラハムが珍しく顔をしかめ、嫌がっていますね。
「ありゃりゃ?ディレルがリズムに乗ってきたよ。アブラハム、本当に苦戦するかも…」と思っていると、4ラウンド終盤、アンドレ・ディレルの左ストレートがアルツール・アブラハムの顔面にクリーンヒットし、アルツール・アブラハムがダウン!後ろに下がったところへもらったパンチなので、それほど肉体的なダメージはないと思いますが、敵地アメリカで奪われたダウンだけに精神的なダメージは深そうですね。
続く第5ラウンドには、アルツール・アブラハムがアンドレ・ディレルをコーナーへ追い詰め、強烈な右ストレートを打ち込みますが、アンドレ・ディレルもすぐにカウンターの左フックを打ち返して反撃。自慢の強打で数々の強敵をリングに沈めてきたアルツール・アブラハムに対して、アンドレ・ディレルは手数とスピードで攻撃する勇敢なボクシングで対抗していますね。
「ディレルの手数とスピードは本当にすごい!このままの手数とスピードで試合が進むとは思えないけど、アブラハムは早めにディレルのリズムを崩さないと、ポイントを奪われ続けて判定負けしちゃうよ」とKOキングの奮起を期待する管理人。しかし、7ラウンド終了間際には、パンチを出しながら前進するアルツール・アブラハムに対して、アンドレ・ディレルがカウンターの左フックを叩き込み、「あわやダウン」というシーンを作り出します。
「ロープがなかったら、アブラハムはダウンしてたんじゃない?レフェリーによってはダウンを取ってもおかしくないよ。今のパンチでアブラハムは右まぶたをカットしちゃうし、本当に苦しくなってきたなあ」とアルツール・アブラハムの大苦戦に驚く管理人。プロ転向後、全勝街道を突き進み、スーパー・シックスでも首位を走るアルツール・アブラハムが、アンドレ・ディレルのボクシングに翻弄され、いよいよ苦しくなってきました。