スーパーミドル級12回戦(スーパー・シックス 第2ステージ)
試合内容
衝撃の結末!アルツール・アブラハム対アンドレ・ディレル(前編)を読む
8ラウンド開始直後から反撃を試みるアルツール・アブラハム。ガードを固めて距離を詰め、ラウンド中盤には、アンドレ・ディレルをコーナーへ追い詰めて自慢の強打を連打します。しかし、アンドレ・ディレルは巧みなボディーワークとブロッキングでクリーンヒットを避け、ラウンド終盤には、強烈な右フックのカウンターで反撃。顔面にほとんど傷がないアンドレ・ディレルに対して、アルツール・アブラハムは顔面の傷が目立つようになってきました。
自慢の強打を武器に相手を一発で決めるボクシングが持ち味のアルツール・アブラハム。これまで、序盤はガードを固めて相手の様子を観察し、後半勝負で世界の猛者を打ち倒してきたアルツール・アブラハムですが、後半になってもアンドレ・ディレルのスピードが落ちないため、なかなかつかまえることができません。
試合前は「ディレルが前半ポイントをリードして、スタミナ、スピードが落ちてくる後半が勝負。ディレルが逃げ切るか、アブラハムがつかまえるか、どっちだろう?」と予想していたのですが、アンドレ・ディレルがスピードを生かして予想以上に上手く戦い、スタミナをセーブしています。
「後半になっても、アブラハムのパンチが当たらないよ。ディレルはすごいな」と思っていると、10ラウンド中盤、アルツール・アブラハムがコンパクトな右ストレートをアンドレ・ディレルのアゴにクリーンヒットさせ、アンドレ・ディレルが尻餅をつきます。「あ、ダウン!」と思わず叫ぶ管理人。ところが、レフェリーの判断はスリップで、そのまま試合が続行されます。
「ダウンにはならなかったけど、ダメージはあるよ。ここからディレルは肉体的にも、精神的にも苦しくなるはず。ポイントで負けているアブラハムだけど、逆転チャンスの芽が出てきたんじゃない?」と数々の劇的なKO勝ちを収めてきたアルツール・アブラハムの奮起を期待する管理人。10ラウンド終了後、コーナーで休むアンドレ・ディレルを観ると、この試合初めて弱気な表情を浮かべています。
そして迎えた運命の11ラウンド、衝撃の結末が待っていました。右ジャブで突き放して距離を取ろうとするアンドレ・ディレルに対して、アルツール・アブラハムはガードを固めながら強引に前へ出ます。ポイントで負けているアルツール・アブラハムは完全にKO狙いのボクシングですね。
1分すぎ、アルツール・アブラハムがジワリジワリとプレッシャーをかけてアンドレ・ディレルをコーナーへ追い込み、顔面へ左ジャブを叩き込みます。アンドレ・ディレルは水で濡れているキャンパスに足をとられてスリップダウンし、その場にしゃがみ込んでしまいます。すると、しゃがみ込んで無防備な状態のアンドレ・ディレルの顔面に、アルツール・アブラハムの強烈な右フックがクリーンヒットし、アンドレ・ディレルがダウン!レフェリーがブレイクをかけた後に打ったアルツール・アブラハムのパンチで、地元アメリカのアンドレ・ディレルがキャンバスに沈んでしまい、試合会場は騒然となっています。
「アブラハムが何とかポイントを挽回しようと、流れの中で打ったパンチだけど、これは反則を取られてもしょうがないよ。ディレルが起き上がってくれば2ポイントの減点で済むけど、ディレルが試合を続行できないと、アブラハムの反則負けになるんじゃないかな?」と思っていると、リングアナウンサーのジミー・レノン・ジュニアが登場して「アブラハムの故意の反則パンチでダウンしたディレルは試合を続行することができない」とコールし、11ラウンド、アンドレ・ディレルが反則勝ちでアルツール・アブラハムに勝利しました。
前半から中盤はアンドレ・ディレルが主導権を握り、終盤はアルツール・アブラハムが猛追。「さあ、ラスト2ラウンド勝負だぞ」という時にアクシデントが発生して「最もエキサイティングな2ラウンド」が夢と消え去ったことは残念ですが、お互いの「勝ちたい」という気迫がみなぎっていた試合でした。
アンドレ・ディレルの勝利で俄然、スーパー・シックスがおもしろくなってきましたね。初戦のカール・フロッチ戦、今回のアルツール・アブラハム戦を観ると、アンドレ・ディレルは「台風の目」になるかもしれませんね。同じスピードを武器にするアンドレ・ウォードと比べて、ディフェンス力は劣るかもしれませんが、攻撃力と耐久力があるんですよ。試合を重ねるごとに強くなっていることを実感できるボクサーですね。スイッチヒッターなので、対戦相手は戦いづらいですよ。
試合結果
試合結果 | アンドレ・ディレルが11ラウンド反則勝ちでスーパー・シックス初勝利。アルツール・アブラハムはプロ初黒星。 |