WBC世界スーパーミドル級タイトルマッチ
チャンピオン | カール・フロッチ(イギリス) 戦績:24戦全勝19KO |
挑戦者 | ジャーメイン・テイラー(アメリカ) 戦績:31戦28勝17KO2敗1分 |
試合内容
2008年12月、ジャン・パスカルとの王座決定戦を制し、ベルトを獲得した全勝チャンピオンのカール・フロッチが、2階級制覇を狙う元4団体統一世界ミドル級チャンピオンのジャーメイン・テイラーの地元アメリカに乗り込んで初防衛戦を行います。スラッガー対テクニシャンの米英対決ですね。
試合序盤、まず主導権を握ったのは挑戦者のジャーメイン・テイラー。回転が速く、的確な左ジャブを中心にクリーンヒットを奪い、試合のペースを握ります。一撃の威力はカール・フロッチのほうが上ですが、手数、的確さはジャーメイン・テイラーのほうが上ですね。カール・フロッチは、ジャーメイン・テイラーのスピードに戸惑っているようです。
試合が動いたのは3ラウンド。2分すぎ、カール・フロッチが攻撃に出たところへ、ジャーメイン・テイラーが右ストレートのカウンターを合わせます。「あ、ちょっと効いた」と思っていると、再びジャーメイン・テイラーが右ストレートのカウンター!このパンチがカール・フロッチの顔面をモロにとらえ、ジャーメイン・テイラーがダウンを奪います。
「フロッチはテイラーのスピードについて行けないなあ。フロッチはブロックの上からでもいいから、得意の右ストレートを打ち込んでリズムを作りたいところなんだけど、テイラーが上手く戦っているよ」というのが序盤の感想です。「この展開だと、中盤以降にテイラーが倒すんじゃないかな?」と思ったのですが、4ラウンド以降、ジャーメイン・テイラーの悪い癖が出ます。
3ラウンドにダウンを奪ったジャーメイン・テイラーですが、4ラウンドに入ると、必要以上にカール・フロッチの状態を確認するボクシングで、極端に手数が減ります。逆に、カール・フロッチは、手数を出してピンチを脱出する作戦で、本来の思い切りの良さが出始めましたね。カール・フロッチは「攻撃こそ最大の防御」という言葉が似合う典型的なボクサーで、攻撃すると、本当に魅力的な選手です。ジャーメイン・テイラーは、カール・フロッチの一撃を警戒してか、ますます手数が減っています。
「テイラーはなぜ行かないんだろう?行けばもっとダメージを与えられるのになあ」とちょっとガッカリする管理人。ミドル級のタイトルを大逆転で奪われたケリー・パブリック戦と同じような展開です。スタミナやタフネスに不安を感じるジャーメイン・テイラーとは対照的に、チャンピオンのカール・フロッチは打たれても、とにかく前へ出てパンチを集めています。
「フロッチの連打に巻き込まれて、テイラーが全く休めないよ。接近戦で打ち合うか、離れて戦うかを徹底しないと、テイラーは試合が進むにつれて苦しくなるかも」と危惧する管理人。「持ち味のスピードを活かして戦うと、ジャーメイン・テイラーに分がある」と思うのですが、全くわからない展開になってきました。
中盤以降は一進一退の攻防で迎えた最終ラウンド。カール・フロッチが最後の力を振り絞って、勝負に出ます。後ろに下がりながらカウンターを狙うジャーメイン・テイラーに対して、左ジャブ、右ストレートのコンビネーションを連打し、少しずつ距離を詰めます。そして、1分すぎ、ジャーメイン・テイラーの顔面に右ストレートを当て、ロープへ追いつめて左右のフックを連打!
「テイラー、危ない!かなり効いてるよ」と思っていると、残り45秒、カール・フロッチがジャーメイン・テイラーをコーナーに詰めて、右ストレート、右ストレート、左ストレートの3連打でダウンを奪います!フラフラになりながら立ち上がったジャーメイン・テイラーですが、ダメージはかなり深く、ストップされてもおかしくないほどのダメージを抱えています。
レフェリーの「ファイト」がかかると同時にカール・フロッチがジャーメイン・テイラーに詰め寄り、右ストレートを強振し、ジャーメイン・テイラーをコーナーへ追い詰めます。そして、勝利への執念をみせるカール・フロッチは、ここから怒涛の17連打!最後はジャーメイン・テイラーの腰が落ちたところで、レフェリーが試合をストップし、最終ラウンド2分46秒、カール・フロッチが大逆転TKO勝ちでタイトルの初防衛に成功しました。
ものすごい逆転劇でしたね。今のところ2009年で一番衝撃的な大逆転です。試合前は「ひょっとすると、テイラーのワンサイドになるかな」と思っていただけに、敵地アメリカで、驚異的な執念をみせたカール・フロッチの底力には本当に驚きました。ジャーメイン・テイラーにとっては悔やまれる敗戦ですが、これがボクシングの奥深さなのかもしれないですね。「最終ラウンドまで何が起こるかわからない」ということが改めて身にしみた試合でした。
試合結果
試合結果 | カール・フロッチが12ラウンド逆転TKO勝ちで初防衛に成功。ボクシングの歴史に残る逆転劇でした。 |