IBF・WBO世界ヘビー級タイトルマッチ
チャンピオン | ウラディミール・クリチコ(ウクライナ) 戦績:55戦52勝46KO3敗 |
挑戦者 | ルスラン・チャガエフ(ウズベキスタン) 戦績:26戦25勝17KO1分 |
試合内容
IBF・WBO世界ヘビー級チャンピオンのウラディミール・クリチコと、WBA世界ヘビー級チャンピオンのルスラン・チャガエフが拳を交えるヘビー級チャンピオン対決です。当初はウラディミール・クリチコが持つIBF・WBO世界ヘビー級タイトルにデビッド・ヘイが挑戦する予定でしたが、デビッド・ヘイの負傷により、急遽、挑戦者がルスラン・チャガエフに変更されました。
そのため、チャンピオン同士の対決ですが、この試合にかけられているタイトルはウラディミール・クリチコが持つIBF・WBO世界ヘビー級タイトルのみで、ルスラン・チャガエフが持つWBA世界ヘビー級タイトルはかけられていません。チャンピオンのウラディミール・クリチコに、ルスラン・チャガエフが挑戦する図式ですが、ヘビー級を代表するチャンピオン対決に変わりはなく、「ヘビー級最強」の呼び声が高いウラディミール・クリチコ相手に、サウスポーのルスラン・チャガエフがどんな作戦で挑むのか、興味津々です。
入場シーンを観る限り、ウラディミール・クリチコもルスラン・チャガエフも気合いの入った良い表情をしています。管理人が驚いたのはウラディミール・クリチコのシェイプアップされた鋼のような体です。前回のハシム・ラクマン戦から6キロ絞り、この試合の体重は約109キロ。スピードのあるデビッド・ヘイ対策として体を絞ったと思うのですが、ルスラン・チャガエフ相手にどんな結果をもたらすのか、6万人の観客が見つめる中、チャンピオン対決のゴングが鳴り響きます。
試合が始まると、ルスラン・チャガエフがガードを固めて、ウラディミール・クリチコの真正面から懐へ飛び込もうとします。「うそ、ど真ん中勝負なの?」とルスラン・チャガエフの戦術に驚く管理人。試合前、「チャガエフはフットワークを使ってボディーを中心に打っては離れるだろうな」と予想していただけに、かなり予想外な戦術です。ウラディミール・クリチコは身長、リーチともにルスラン・チャガエフを15センチも上回るため、離れて戦うと、ルスラン・チャガエフのパンチが届かないわけですが、1ラウンドからいきなり勝負をかけてきましたね。
「これはおもしろくなってきたよ」と興奮する管理人ですが、ウラディミール・クリチコは冷静そのもの。左ジャブで距離を保ちながらルスラン・チャガエフを威嚇し、1ラウンド残り15秒、この試合初の力強い右ストレートを打ち込みます。当たりは浅いですが、「伝家の宝刀」がルスラン・チャガエフの顔面をクリーンヒット!ルスラン・チャガエフのブロックの真ん中を破るお手本のような右ストレートです。
2ラウンドも、ウラディミール・クリチコが左ジャブでルスラン・チャガエフの出鼻をくじく展開が続きます。そして、2分すぎ、ウラディミール・クリチコの右ストレートがルスラン・チャガエフのガードの真ん中を突き破り、ルスラン・チャガエフがダウン!ウラディミール・クリチコが得意とするワンツー、「左ジャブから最短距離を走る右ストレートのコンビネーションブロー」です。
ダウンから立ち上がったルスラン・チャガエフの表情をチェックすると、肉体的なダメージは思ったより少なそうですが、精神的なダメージが大きそうですね。本来カウンターパンチャーのルスラン・チャガエフが体格差を考えて、決死の覚悟でファイタースタイルで戦っているのですが、「近づこうにも近づけず、ワンツーをもらってしまう」悪循環に陥っています。もちろん、離れて戦うと、ルスラン・チャガエフはパンチが届かないので、どうしようもない状態です。
3ラウンド以降は完璧なウラディミール・クリチコのペースで進み、おもしろいように得意のワンツーがルスラン・チャガエフの顔面をとらえます。7ラウンドには、ルスラン・チャガエフが左まぶたをカットし、ますます苦しい展開になります。そして、7ラウンド終了直後には、故意ではないと思いますが、クリンチ際にルスラン・チャガエフがウラディミール・クリチコに左フックを打ち込んで、ウラディミール・クリチコが珍しく怒りをあらわにする場面を目にし、「こんなに怒ったクリチコ初めて観たよ。次のラウンドでクリチコがKOを狙いにくるかも」という雰囲気が漂います。
8ラウンドに入ると、ウラディミール・クリチコがフットワークを使って、ルスラン・チャガエフと距離を保ちながら、左ジャブでダメージを与え、迎えた9ラウンド。試合開始直後からウラディミール・クリチコが距離を詰めて勝負に出ます。すると、ルスラン・チャガエフがロープを背負う場面が増え、ラスト1分はコーナーから逃れることができません。ウラディミール・クリチコはガードを固めて守るのが精一杯のルスラン・チャガエフに対して、得意のワンツーを連打!滅多打ち状態で、9ラウンドが終了します。
ウラディミール・クリチコのパンチを受け続けたルスラン・チャガエフは大きなダメージを受け、10ラウンド開始のゴングが鳴るも、コーナーから立ち上がることができず、試合を放棄。世界中のボクシングファンが注目した試合は、IBF・WBO世界ヘビー級チャンピオンのウラディミール・クリチコが、WBA世界ヘビー級チャンピオンのルスラン・チャガエフに10ラウンドTKO勝ちの圧勝を収めました。
いやー、ウラディミール・クリチコの強さが際立った試合でしたね。試合前の予想では、「チャガエフなら、もしかすると、もしかするよ」という期待が頭をよぎったのですが、どうしようもない展開でしたね。敗れはしましたが、ルスラン・チャガエフはとても勇敢に勝負を挑み、9ラウンドのコーナーでウラディミール・クリチコの連打に耐える姿は感動すら覚えました。
この試合の勝利で、クリチコ兄弟の「主要4団体のタイトル統一」の夢がますます現実味を帯びそうです。残るタイトル保持者はWBA世界ヘビー級チャンピオンのニコライ・ワルーエフだけ(WBAはルスラン・チャガエフのケガによる長期離脱で、ニコライ・ワルーエフとルスラン・チャガエフの2人がチャンピオンとして認定されています)。兄のビタリ・クリチコ、弟のウラディミール・クリチコのどちらがニコライ・ワルーエフのベルトを狙うのでしょうか?「クリチコ兄弟時代」が絶頂期を迎えようとしています。
試合結果
試合結果 | ウラディミール・クリチコが10ラウンドTKO勝ちで、ルスラン・チャガエフに圧勝。ルスラン・チャガエフは初黒星。 |