WBC世界ヘビー級タイトルマッチ
チャンピオン | ビタリ・クリチコ(ウクライナ) 戦績:38戦36勝34KO2敗 |
挑戦者 | ファン・カルロス・ゴメス(キューバ) 戦績:46戦44勝35KO1敗1無効試合 |
試合内容
2008年10月、4年ぶりの復帰戦でいきなりサミュエル・ピーターが持つWBC世界ヘビー級タイトルに挑戦し、衝撃のTKO勝ちを収めたビタリ・クリチコが、ランキング1位の指名挑戦者、ファン・カルロス・ゴメスを迎えて初防衛戦に挑みます。劇的な復帰を果たしたヘビー級の「ボス」が、初防衛戦でどんなボクシングをみせてくれるのか、興味津々ですね。
WBC世界ヘビー級チャンピオンのビタリ・クリチコは、言わずと知れたヘビー級を席巻するクリチコ兄弟の兄。IBF・WBO世界ヘビー級チャンピオンで弟のウラディミール・クリチコとボクシング史上初の兄弟同時世界ヘビー級チャンピオンという快挙を達成し、兄弟で4団体すべてのベルト制覇を狙う右の大砲です。
一方のファン・カルロス・ゴメスは、クルーザー級で3団体統一を成し遂げた技巧派のサウスポー。 2008年9月にウラディミール・ウィルチスとの挑戦者決定戦を制し、初のヘビー級タイトル挑戦のチャンスを手にしました。ビタリ・クリチコに勝利して、2階級制覇を達成することができるでしょうか?
序盤はビタリ・クリチコ、ファン・カルロス・ゴメスともにお互いの一発を警戒してか、硬さがみられる立ち上がり。普段は身長202センチ、リーチ203センチの体格的なアドバンテージを活かして左ジャブから右ストレートを打ち込み、相手にプレッシャーを与えるビタリ・クリチコですが、サウスポーのファン・カルロス・ゴメスがビタリ・クリチコの左ジャブを叩き落とすため、左手を前に出して戦っているせいか、戦いづらそうですね。
一方のファン・カルロス・ゴメスも普段のアウトボクシングではパンチが届かないため、思い切って踏み込んでビタリ・クリチコの懐で勝負したいところですが、想像以上にビタリ・クリチコのパンチに威力があるのか、ガードの上からでもパンチが効いている感じです。
「クリチコは今まで観たことがないくらいバランスの悪いボクシングをしているなあ。ゴメスのパンチも当たりそうなんだけど、この展開が続くと、ゴメスが先に耐え切れなくなりそうだなあ」というのが序盤の印象です。ビタリ・クリチコのペースで進んでいると思うのですが、サミュエル・ピーター戦と比べて、体に力が入りすぎて、バランスが悪いですね。5ラウンド終了時点で、かなりスタミナを消耗しています。
「ゴメスが倒されるか?クリチコのスタミナが切れるか?我慢比べになってきたなあ」と予想外の展開に驚く管理人。ビタリ・クリチコが主導権を握っていますが、ファン・カルロス・ゴメスが一発いいパンチを入れれば、ビタリ・クリチコも倒れそうな雰囲気です。クリチコ兄弟唯一の弱点とも言えるスタミナ不足を露呈しています。
ビタリ・クリチコのスタミナ不足に気がついたのか、それとも「このままクリチコのパンチに耐え切ることはできない」と感じたのか、6ラウンドに入ると、ファン・カルロス・ゴメスがビタリ・クリチコの懐に思いっきり飛び込んで勝負をかけます。ダメージの蓄積でパンチと動きのスピードを奪われたファン・カルロス・ゴメスですが、懸命にビタリ・クリチコの顔面に左フックを打ち込もうとしています。
7ラウンド中盤には、ファン・カルロス・ゴメスが左フックから左ストレートのコンビネーションをビタリ・クリチコの顔面に当て、この試合初めてロープへ追い詰めます。「ゴメス最大のチャンスだよ」と思ったのですが、クリンチでしのいだビタリ・クリチコが強烈な右フックを打ち込み、逆にダウンを奪います。
立ち上がったファン・カルロス・ゴメスに対して、さらに追いうちをかけるビタリ・クリチコ。強烈な右ストレートがファン・カルロス・ゴメスのアゴをとらえ、ファン・カルロス・ゴメスがグロッキーになります。「あああ、もう無理だ!」と思ったのですが、ビタリ・クリチコも打ち疲れのため、その後パンチを出すことができず、ファン・カルロス・ゴメスがこのラウンドを何とかしのぎます。
しかし、両者の疲れ具合の違いは大きく、8ラウンド、休みながら戦いスタミナ回復に努めたビタリ・クリチコに対して、ファン・カルロス・ゴメスはダメージを抱えたままビタリ・クリチコのパンチをかわすのが精一杯。9ラウンドに入ると、ビタリ・クリチコが勝負をかけ、左ジャブの連打でファン・カルロス・ゴメスをロープへ追い詰め、右のダブルでダウンを奪います。
立ち上がったファン・カルロス・ゴメスに対して、さらに襲い掛かるビタリ・クリチコ。足が動かないファン・カルロス・ゴメスにパンチを集め、再びロープへ追い詰めたところで、レフェリーが試合をストップ。ビタリ・クリチコが2階級制覇を狙うファン・カルロス・ゴメスを退け、初防衛に成功しました。
試合内容は決して良くなかったビタリ・クリチコですが、試合終了後の腫れあがったファン・カルロス・ゴメスの顔を観ると、「やっぱり強いなあ」と思ってしまいますね。ただ、復帰戦に続き、スタミナに不安を感じさせる内容で、今後ビタリ・クリチコが敗れるとすれば、「スタミナを消耗したところにパンチをもらった場合かな」と自滅パターンが頭をよぎった試合でもありました。
試合結果
試合結果 | ビタリ・クリチコが9ラウンドTKO勝ちで初防衛に成功。 |