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ウラディミール・クリチコとエディ・チャンバースのヘビー級決戦

IBF・WBO世界ヘビー級タイトルマッチ

チャンピオン ウラディミール・クリチコ(ウクライナ)
戦績:56戦53勝47KO3敗
挑戦者 エディ・チャンバース(アメリカ)
戦績:36戦35勝18KO1敗

試合内容

クリチコ兄弟の弟で、IBFとWBOの2本の世界ヘビー級チャンピオンベルトを持つウラディミール・クリチコが、アメリカの新鋭で、世界タイトル初挑戦のエディ・チャンバースをドイツに迎えて拳を交えます。IBFは8度目、WBOは4度目の防衛戦ですね。

左肩を手術し、リングを離れていたウラディミール・クリチコにとっては、2009年6月のルスラン・チャガエフ戦以来の試合です。数々の対戦相手を沈めてきたウラディミール・クリチコの右ストレートが炸裂するのか?それとも、エディ・チャンバースのスピードがウラディミール・クリチコを混乱に陥れるのでしょうか?

試合は、チャンピオンのウラディミール・クリチコが左ジャブを連打してエディ・チャンバースを突き離しながら右ストレートを顔面へ打ち込む予想通りの展開。左ジャブのキレ、右ストレートの威力を観る限り、ウラディミール・クリチコの調子は良さそうです。

一方のエディ・チャンバースはガードを高く構え、チャンスを待って右ストレート、左フックを打ち込むカウンター作戦。クリンチ際に2メートルを超えるウラディミール・クリチコを持ち上げるなど気合い十分ですね。ウラディミール・クリチコのパンチはガードの上からでも効くので、できるだけ早いラウンドで攻撃に出たいところです。

試合が動いたのは2ラウンド。プレッシャーをかけてエディ・チャンバースをロープに追い詰めたウラディミール・クリチコが、左ジャブでエディ・チャンバースのガードをこじ開けて、ど真ん中から強烈な右ストレートを叩き込みます。体の柔らかいエディ・チャンバースだからこそ、ヨロヨロと後退するだけで何とか踏みとどまりましたが、ダウンしてもおかしくない威力です。

「クリチコのパンチがめちゃめちゃキレてるよ。すんごい破壊力!」と改めてウラディミール・クリチコの攻撃力に驚く管理人。「一発もらって、チャンバースはどう戦うかな?」と思っていると、エディ・チャンバースはこれまで以上にウラディミール・クリチコのパンチを警戒し、ガードを固めてディフェンス重視のボクシングを展開します。

3ラウンド以降は、ウラディミール・クリチコがエディ・チャンバースをロープに詰めて、ガードの上からパンチを打ち込む展開が続きますが、さすがのウラディミール・クリチコも貝のようにガードを固めるエディ・チャンバースに決定打を叩き込むことはできず、2009年12月に行われたビタリ・クリチコとケビン・ジョンソン戦のような展開になってきました。

「チャンバースがこれだけディフェンス重視だと、さすがのクリチコも倒せないよ。ボクシングにならないもんな」とウラディミール・クリチコに同情する管理人。9ラウンド終了後には、ガードに専念してきたエディ・チャンバースのグローブが裂けるアクシデントが発生するなど、ウラディミール・クリチコは持ち前の破壊力を証明しますが、エディ・チャンバースを打ち倒すことはできず、試合は進みます。

9ラウンド以降、ウラディミール・クリチコがプレッシャーを強め、エディ・チャンバースを倒しにかかります。そして迎えた最終ラウンド。これまで観たこともないほど、ウラディミール・クリチコがパンチを振り回し、エディ・チャンバースに襲いかかります。

「こんなクリチコ、初めて観たよ。倒したいって気迫がめちゃめちゃ伝わってくるもんな」とテレビ画面ごしにウラディミール・クリチコの気合いを感じる管理人。無理をしない沈着冷静なボクシングで、タイトルを防衛してきたウラディミール・クリチコですが、会場に詰めかけた観客、世界中のボクシングファンのためにKOを狙いに行っているようです。

そして、試合終了間際、ついに「その瞬間」が訪れます。ウラディミール・クリチコは「とにかく倒されないように」とガードを固めて距離を取るエディ・チャンバースをコーナーへ追い詰め、強烈な左フックを一閃!起死回生のパンチはエディ・チャンバースのガードの真ん中をすり抜けて顔面を直撃し、エディ・チャンバースがその場に崩れ落ちます。

その瞬間、5万人の観客が押し寄せた会場が歓喜に包まれ、ウラディミール・クリチコが12ラウンド2分55秒、エディ・チャンバースにKO勝ちを収めました。エディ・チャンバースは失神して全く動けませんでしたね。残り時間5秒の劇的なKO勝利です!

正直なところ、管理人はビタリ・クリチコに比べてウラディミール・クリチコのボクシングが好きではありませんでした。ウラディミール・クリチコは過去のKO負けがトラウマになっているのか、ビタリ・クリチコに比べて、相手を打ち倒しに行く姿勢が希薄な気がします。打ち合いを避ける、堅実すぎるボクシングゆえ、ブーイングが起こる試合も数多くありました。ボクシングの中心がヘビー級から中量級に移ったのも、このあたりが原因だと思います。

しかし、この試合のウラディミール・クリチコはプロボクサーとして本当に素晴らしかったです。はっきり言って、ウラディミール・クリチコの試合で初めて感動しました。しかも、とびきりの感動です。逃げ回る相手をKOすることは並大抵の作業ではありませんが、ヘビー級の統一チャンピオン、ウラディミール・クリチコは、なりふり構わず相手を打ち倒しに行き、大観衆の前で見事に「責任」を果たしました。

「ヘビー級のボス、ボクシング界のボスは誰か」を自らの拳で証明したウラディミール・クリチコ。クリチコ兄弟の兄、ビタリ・クリチコと共に、ヘビー級の4本のベルトをすべて手にすることはできるでしょうか?そして、中量級に奪われたボクシング界の覇権を奪還し、再び「栄光のヘビー級」を取り戻すことはできるでしょうか?クリチコ兄弟の挑戦が最終章を迎えようとしています。

試合結果

試合結果 ウラディミール・クリチコが12ラウンドKO勝ちでタイトル防衛に成功。残り時間5秒の劇的なKO勝ちでした。
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