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大熱戦の行方は?ティモシー・ブラッドリー対ルスラン・プロボドニコフ(後編)

ティモシー・ブラッドリー対ルスラン・プロボドニコフの試合内容(後編)

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絶体絶命のピンチを乗り切り、ラウンドを重ねるにつれて、ポイントを奪い返しているティモシー・ブラッドリー。一方、悲願の世界タイトル奪取に燃えるルスラン・プロボドニコフは、ティモシー・ブラッドリーが打ち合いに応じたことで、少しずつパンチが出るようになってきました。

「プロボドニコフはもう少し小さくパンチを打てるといいんだけどなあ。本来はもっとパンチが出るボクサーなんだけど、かなり疲れてるね。ブラッドリーのペースになってきたよ」と思っていると、6ラウンド残り30秒、ルスラン・プロボドニコフがティモシー・ブラッドリーをコーナに詰め、左フックを一閃します。

ガクンと腰が落ちるティモシー・ブラッドリー。ルスラン・プロボドニコフはパンチを連打して、KOを狙います。ティモシー・ブラッドリーはロープを背負いながら必死にパンチを出していますが、ルスラン・プロボドニコフの強打を浴び、立っていることが精一杯の状態です。

攻め込むルスラン・プロボドニコフ
【Photo:The Ring Magazine

「すさまじいラスト30秒!ブラッドリーはよく耐えたなあ。プロボドニコフが一発でひっくり返せる可能性があることを証明したラウンドだったんで、さあ、ブラッドリーはどうするかな?打ち合いは、さすがに危険じゃないかな?」とティモシー・ブラッドリーの作戦に注目する管理人。

7ラウンドに入ると、ティモシー・ブラッドリーが左ジャブを連打して距離を取り、再びアウトボクシングに切り替えます。ルスラン・プロボドニコフは必死に追いかけていますが、距離を詰めたところで左右に逃げられ、パンチが当たりません。

9ラウンド残り40秒には、ティモシー・ブラッドリーが得意とするオーバー・ハンド・ライトがルスラン・プロボドニコフの顔面をとらえます。ルスラン・プロボドニコフの顔面が腫れ上がってきましたね。

「プロボドニコフが追いかけると、ブラッドリーは応戦する傾向にあるんで、逆転のチャンスがあるかも。ブラッドリーがめっちゃ疲れているんで、プロボドニコフが追いかけられると、おもしろいんだけどなあ。最終ラウンド、総攻撃できるかな?」と大熱戦の行方に注目する管理人。

12ラウンドが始まると同時に飛び出すルスラン・プロボドニコフ。ティモシー・ブラッドリーはアウトボクシングをしようとしますが、途中から打ち合いに切り替えて応戦します。フットワークが完璧じゃないティモシー・ブラッドリーは「逃げ切れない」と感じているのかもしれませんね。

ティモシー・ブラッドリーが足を止めたことで、試合は一気にヒートアップ!最後の力を振り絞って追いかけ、パンチを振り回すルスラン・プロボドニコフに対して、ティモシー・ブラッドリーが回転の速い連打を上下に叩き込む打ち合いが続きます。

「プロボドニコフ、あと一歩なんだけどなあ。ブラッドリーが逃げ切りそうな雰囲気だよ」と思っていると、残り1分、ルスラン・プロボドニコフがティモシー・ブラッドリーをロープに詰め、左フックを顔面に打ち込みます。

ヨロヨロと後退するティモシー・ブラッドリー。逆転KOを狙うルスラン・プロボドニコフは、ティモシー・ブラッドリーに襲いかかり、左右のフックを連打!ティモシー・ブラッドリーはフラフラになりながら、パンチを出して応戦しています。

残り30秒には、ルスラン・プロボドニコフの右ストレートがティモシー・ブラッドリーのアゴを打ち抜き、ティモシー・ブラッドリーがグロッキーに!絶好のチャンスを手にしたルスラン・プロボドニコフはクリンチを振りほどき、力の限り、パンチを出し続けます。

逆転KOを狙うルスラン・プロボドニコフ
【Photo:The Ring Magazine

「残り15秒、逆転できるよ!」と思った瞬間、ティモシー・ブラッドリーがヒザをついてダウン!ダウンを喫したティモシー・ブラッドリーですが、何とか立ち上がり、試合再開と同時に終了のゴングが鳴り響きます。ルスラン・プロボドニコフは最後の一撃を決めきることができませんでした。

序盤と終盤に劇的なドラマが待っていた大熱戦の勝敗は3人のジャッジに委ねられ、結果は3人のジャッジすべてが、僅差でティモシー・ブラッドリーを支持。ティモシー・ブラッドリーがルスラン・プロボドニコフの反撃に耐え抜き、ウェルター級タイトルの初防衛に成功しました。

いやー、とんでもない激闘でしたね!セルヒオ・マルチネス対フリオ・セサール・チャベス・ジュニアの最終ラウンド以上に「うぎゃ、大逆転だよ!これは決まった!」と絶叫してしまった最終ラウンドでした。ボクシングの美学が凝縮された、すばらしい激闘だったと思います。

試合予想のときに少しだけ触れたのですが、ティモシー・ブラッドリー対ルスラン・プロボドニコフを観戦する前、ボクシング関係者とメディア関係者のご厚意で、ルスラン・プロボドニコフのVTRをチェックさせていただく機会がありました。

VTRをチェックして、正直なところ「ブラッドリーが打ち合えばかみ合いそうな気がするけど、さすがに打ち合わないんじゃないかな?かみ合わないまま、ブラッドリーがダメージを与え続け、危険がなくなればKOを狙うか、大差の判定で逃げ切る気がする」と思っていました。

でも、いつもボクシングについて教えていただいている専門家の皆さん、番組やウェブサイトを担当しているメディア関係者の皆さんは、口をそろえて「"It's gonna be fireworks."(大激闘になるよ)」と言っていました。結果は手に汗握る、すさまじい熱戦。試合後に「どうして激闘になると思ったの?」と質問してみました。

「ボクサーの人生は、1試合で大きく変わるけど、その1試合を戦うための準備や伏線は、ボクサーがボクシングを始めたときから続いているんだよ。ボクシングの専門家は、1試合、1分、1秒を戦うための準備や伏線に目を向けているのさ。そこに注目すると、もっとボクシングがおもしろくなるよ」と教えてくれました。

浅はかな管理人と違い、専門家の皆さんは「ビッグマッチに長く恵まれなかったブラッドリーのスーパースターに対する劣等感やメガファイトにかける夢」を強く意識しながら、マニー・パッキャオ戦で手にした勝利と風評の代償に目を向け、「大激闘になる」と予想したそうです。

初防衛に成功したティモシー・ブラッドリー
【Photo:The Ring Magazine

ティモシー・ブラッドリーは、以前からピンチになると打ち合って脱出しようとする傾向が強いボクサーだったと思うのですが、マニー・パッキャオ戦の「大論争を巻き起こした勝利」がなければ、あそこまで打ち合わなかったと思います。

立ち上がりで大きなダメージを負い、3ラウンドでアウトボクシングに切り替え、ペースを握り返したティモシー・ブラッドリーが中盤以降、再び打ち合う必要はなかった気がします。アウトボクシングを続ければ、危険を回避しながら、ポイントアウトできたはずです。

もしかすると、ティモシー・ブラッドリーが背負った責任感や使命が、打ち合いを選ばせたのかもしれません。いずれにしても、ティモシー・ブラッドリーの過去が「現在の名勝負」につながり「未来のティモシー・ブラッドリー像」をアピールした試合だったと思います。

結果は大苦戦に終わったティモシー・ブラッドリーの初防衛戦。しかし、新しいティモシー・ブラッドリーの決意と責任感が見え隠れした名勝負でした。ルスラン・プロボドニコフの粘りも感動的でしたね。ティモシー・ブラッドリーの真価が問われる戦いはまだまだ続きそうです。深いぜ、ボクシング!あ、浅い一言で締めちゃった。

ティモシー・ブラッドリー対ルスラン・プロボドニコフの試合結果

試合結果 ティモシー・ブラッドリーが12ラウンド判定勝ち。初防衛に成功しました。
【公式ジャッジの採点結果】
  • 115-112
  • 114-113
  • 114-113
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