絶大な人気を誇るイギリス出身の「ヒットマン」

2005年6月、2万人を超える観客が全勝で世界タイトルに初挑戦しているイギリス出身のボクサーに大声援を送っていました。挑戦者の名はリッキー・ハットン。試合前、「絶対的な強さをみせるチャンピオンのコンスタンチン・チューが、前へ出てくる若き挑戦者をカウンターで仕留めるだろう」と予想した管理人ですが、11ラウンド終了後、試合を放棄したのは世界チャンピオンのコンスタンチン・チューでした。接近戦から放たれるリッキー・ハットンのボディーブローが、絶対王者から戦意を奪ったのです。

イギリスで圧倒的な人気を誇るリッキー・ハットンは、接近戦のボディーブロー、左右のフックを得意とする典型的なファイター。1997年9月のプロデビューから38連勝を記録し、2005年6月、初の世界タイトル挑戦となるコンスタンチン・チュー戦でTKO勝ちを収め、IBF世界スーパーライト級タイトルを奪取します。

さらに、2005年11月には、WBA世界スーパーライト級チャンピオンのカルロス・マウサと統一戦を行い、9ラウンド左フック一撃でKO勝ち！圧倒的な強さで、WBA世界スーパーライト級タイトルも獲得します。「器用じゃないけど、突進力、スタミナ、手数がすごいなあ。常に真っ向勝負だよ」とリッキー・ハットンの快進撃に圧倒される管理人。この時期のリッキー・ハットンはまさに飛ぶ鳥を落とす勢いでした。

2006年に入るとウェルター級転向を表明し、2階級制覇に挑戦します。ターゲットはWBA世界ウェルター級チャンピオンのルイス・コラーゾです。「ウェルター級に階級を上げて、ハットンの動きがどう変わるんだろう？」とワクワクする管理人。すると、開始直後いきなり2階級制覇を狙うリッキー・ハットンがダウンを奪います。

「お、曲者のコラーゾ相手に幸先のいいスタート！」と思った管理人ですが、ここからルイス・コラーゾが驚異的な粘りを発揮。前へ出てくるリッキー・ハットンを上手くいなしながら、的確なパンチを当てて反撃します。スーパーライト級時代は力負けしなかったリッキー・ハットンですが、ウェルター級に上がると、そう簡単に相手を下がらせることができないようです。結局、僅差の判定でリッキー・ハットンが2階級制覇を達成しましたが、「それほど大きくないハットンはウェルター級では苦しいかも」と思ってしまう試合内容でした。

その後、リッキー・ハットンはWBA世界ウェルター級タイトルを返上し、再びスーパーライト級で戦います。IBF世界スーパーライト級チャンピオンのファン・ウランゴ、メキシコの強打者、ホセ・ルイス・カスティージョに連勝し、「ハットンは前に出ると本当に強いなあ」とリッキー・ハットンの実力を再認識する管理人。そして、2007年12月、全勝を続けるリッキー・ハットンに人生最大のビッグマッチが訪れます。

「パウンド・フォー・パウンド」の呼び声が高い、WBC世界ウェルター級チャンピオンのフロイド・メイウェザーが「ハットンと戦わせろ！」と指名してきたのです。事の発端はリッキー・ハットンの「メイウェザーの試合を数試合観るより、俺の試合を1試合観たほうがエキサイディングだろ」という発言でした。こうして、フロイド・メイウェザー対リッキー・ハットンの究極の米英全勝対決が実現したのです。

しかし、この試合でリングに沈んだのはイギリスのヒーロー、リッキー・ハットンでした。プロデビューから初の黒星を喫したリッキー・ハットンですが、試合後の「また、リングに戻って来て、すごい試合を見せるよ」という言葉にウソはなく、2008年5月、再起戦でファン・ラスカノに12ラウンド判定勝ちを収めると、2008年11月にはテクニシャンのポール・マリナッジに一方的な内容で11ラウンドTKO勝ち。世界中のボクシングファンに再起をアピールしました。

そして、迎えた2009年5月。世界中のボクシングファンが注目する中、アジアの英雄、マニー・パッキャオと激突します。しかし、結果はまさかの2ラウンドKO負け。「タフなハットンがウソでしょ？」と目の前に広がった光景を疑ってしまうほどの衝撃でした。リングに沈んだ「英国のヒットマン」。2度目の敗北はリッキー・ハットンにとってあまりに辛い現実となるかもしれません。

リッキー・ハットンのプロフィール