オスカー・デラホーヤ対マニー・パッキャオ戦の前、管理人は「減量苦によるデラホーヤのコンディションが試合の行方を左右するんじゃないかな」と予想していました。計量、試合を観る限り、デラホーヤに減量苦があったかどうかはわかりませんが、デラホーヤのコンディションが彼の輝かしいキャリアで最悪だったことは誰の目にも明らかだと思います。
管理人に関わらず、世界中のボクシングファンはデラホーヤ、パッキャオが最高の状態でリングに上がり、スーパースター同士の好勝負を期待していたはずです。ところが、実際は予想を大きく覆してパッキャオの一方的な内容で、「パッキャオが強いというより、デラホーヤが弱い」という印象でした。なぜこれほど内容の薄い、期待外れの試合に終わってしまったのでしょうか?
管理人は、デラホーヤの調整不足に加えて、ここ数年で流行し始めた「禁断のスーパースター対決」に問題があるのではないかと思います。ちなみに、「禁断のスーパースター対決」は世界チャンピオンベルトをかけることなく、現役チャンピオン、有名ボクサー、人気ボクサー同士が戦うビッグマッチで、管理人が勝手にそう名付けているだけです。
スーパースター同士の対決は今も昔も変わらず、管理人にとって大きな楽しみで、ビッグマッチが決まると、「テレビ放送がある日は何とか仕事を入れないようにしよう」とまず考えてしまいます(笑)。今回のデラホーヤ対パッキャオ戦も例外ではなく、8月31日からずっと楽しみに待っていたのですが、ひとつだけ残念に思っていたことがあります。
それは、デラホーヤ対パッキャオ戦がノンタイトル戦だということです。世界タイトルを無視した「禁断のスーパースター対決」が頻繁に行われるようになったのは最近で、2008年はデラホーヤ対パッキャオ戦のほかに、ケリー・パブリック対バーナード・ホプキンス戦、バーナード・ホプキンス対ジョー・カルザゲ戦、ロイ・ジョーンズ対フェリックス・トリニダード戦などがありました。
これらを例にすると、ロイ・ジョーンズ対フェリックス・トリニダード戦を除いて、どちらかひとりが現役のチャンピオンで、別階級のスーパースターと戦うため、階級を変更してノンタイトルで戦っているんです。好意的に考えると、「ボクシングファンが一番観たい試合を優先した」わけですが、逆に「世界タイトルの存在意義を根底から覆している」と考えられなくもありません。
「禁断のスーパースター対決」は人気ボクサー同士が合意した契約体重で試合をするので、世界チャンピオンベルトがなくても、たくさんのお客さんが集まります。しかし、今回のデラホーヤ対パッキャオ戦、パブリック対ホプキンス戦のように、2階級以上違うボクサーが戦う場合は減量、または増量をするため、コンディションを崩しやすいのではないでしょうか?
「禁断のスーパースター対決」ほどボクシングファンの期待が大きくなります。しかし、今回のデラホーヤのようにコンディションが整えられないと、「勝ち負け」以前の問題になり、相対的に勝ったパッキャオの評価にまで影響を及ぼしてしまう可能性も否定できません。しかも、パッキャオはこの試合のため、5キロ以上の増量をしたので、今後どの階級で戦っていくかの判断が大変難しいものになるでしょう。
シュガー・レイ・レナード、ロイ・ジョーンズ、オスカー・デラホーヤなど、一時的に階級を上げてビッグマッチを行い、その後、元の階級に戻ったが、体のキレを失い、本来のボクシングが出来なくなったスーパースターがいることを見逃すわけにはいきません。「禁断のスーパースター対決」はボクシングファンにとって魅力的な試合ですが、諸刃の剣だということも事実なんです。
パッキャオが今回の試合で歴史的な勝利を収めたことで、今後、スーパースター同士のノンタイトル戦がますます増えると思います。「禁断のスーパースター対決」が増えば増えるほど、世界チャンピオンベルトが輝きを失うような気がするボクシングファンは管理人だけでしょうか?もしかすると、デラホーヤとパッキャオは開きかけていたボクシング界の「パンドラの箱」を完全に開けてしまったのかもしれません。